■普通に遊んでいるだけでバグに遭遇『ロマンシング サ・ガ』
1992年にスクウェア(現:スクウェア・エニックス)が世に送り出したスーパーファミコン用ソフト『ロマンシング サ・ガ』は、当時あらゆる意味で画期的なRPGとして話題を呼んだ。
主人公は8人から選べ、ラスボスまでの道のりに決まりはなく、犯罪のような悪事も認められる。当時のRPGとしては自由度がとても高く、プレイヤーがそれぞれの冒険に没頭できたゲームだ。
だが自由の代償なのか、バグがとても多かったのも有名な話だ。海賊船レイディラック号に関連したイベントで特定の挙動をくり返すとセリフやイベントがおかしくなる「レイディバグ」は代表的なバグのひとつで、時には突然エンディングに突入したりする。
ほかにも召喚系の術法を使うとグラフィックが壊れてしまったり、馬への乗り降りを繰り替えずと壁抜けが発生したり……と、衝撃的な不具合がガンガン発生するのが『ロマンシング サ・ガ』だ。普通に遊んでいるだけでも奇怪なバグに遭遇するのだから、もはやお手上げである。
だが『ロマンシング サ・ガ』はユーザーから高い支持を受け、後年に何度もリメイクされる名作となった。
むしろ無数のバグが斬新なゲーム性と化学反応を起こし、本作だけのふしぎな魅力を持つに至ったのだ。良いも悪いもまとめて受け入れることを「清濁併せ呑む」とはよく言うが、本作でも同じことが言えるのかもしれない。
バグは決して歓迎すべき現象ではない。ないほうが良いに決まっているし、懸命にゲームを制作したスタッフの気持ちを考えると胸が痛くなる。
だが今回見てきたように、バグがあっても歴史に残ったゲームがあるのも事実だ。結局、どんなゲームが名作になるかは誰にもわからないのだ。それこそバグのように予測不可能な展開を経て、今日の名作ゲームは存在しているといえるかもしれない。