■憧れ続け、ついに戦士入り『救急戦隊ゴーゴーファイブ』宮村優子
『新世紀エヴァンゲリオン』の惣流・アスカ・ラングレー役で不動の人気を誇る宮村優子さん。声優として絶頂期にあった1999年から、異例の形で『救急戦隊ゴーゴーファイブ』に実写出演している。
宮内さんが演じたのは、速瀬京子というキャラクターだ。ゴーグリーン/巽ショウの学生時代の先輩であり、現在は宇宙飛行士として活動する女性だ。ゴーゴーファイブに憧れ、巽モンド博士らと同様にメカニック面でもチームを支えるなど、準レギュラー的な立ち位置でシリーズを彩った。
第45話「初夢は災魔の旋律(メロディー)」では、夢を吸い取るサイマ獣バハムーとの戦いの中、夢の中でゴーレッドに変身するという印象的なシーンも演じた。顔出しでの変身シーンは、ファンにとって非常に大きな見どころとなった。
さらにスーパー戦隊Vシネマ『救急戦隊ゴーゴーファイブ 激突!新たなる超戦士』では、ジークジェンヌへと変身し、ゴーゴーファイブと共闘。ついに念願の戦士として参戦を果たした。
ちなみに宮村さんは、同作で“闇村悠之介”名義にて敵キャラクター・童鬼ドロップの声も担当している。味方と敵、実写と声。ひとつの作品の中で複数の役割を演じ分けた例は非常に珍しい。これは、彼女が声優として培ってきた高い表現力を存分に発揮した出演だったと言えるだろう。
■敵幹部の声を務め、ヒロインとしても変身『手裏剣戦隊ニンニンジャー』潘めぐみ
『HUNTER×HUNTER』のゴン=フリークス、『【推しの子】』の有馬かななど、少年から大人の女性まで自在に演じ分ける潘めぐみさん。声優、吹き替え、ナレーション、舞台と、ジャンルを超えて活躍する彼女もまた、『スーパー戦隊シリーズ』と深い縁を持つ一人だ。
2015年から放送の『手裏剣戦隊ニンニンジャー』では、狐面が印象的な妖艶な敵幹部・十六夜九衛門の声を担当。ニンニンジャーたちと深い因縁で結ばれた、本作を象徴する重要キャラクターである。気品と恐ろしさを併せ持つ複雑なこの役を、独特の間と抑揚で演じきり、物語に強烈なインパクトを与えた。
さらに翌年の『帰ってきた手裏剣戦隊ニンニンジャー ニンニンガールズVSボーイズ FINAL WARS』(2016年)では、本編で命を落とした九衛門の魂が憑依した九重ルナとして、潘さん本人がまさかの顔出し出演。ミドニンジャーに変身し、ヒロインとして悪と戦う姿は、ファンにとってまさに胸が熱くなる展開だった。
潘さんは自身のX(旧Twitter)で、「ヒーローになりたい。ニンニンジャーは、子供の頃に抱いていた、道半ばで諦めていた夢を、叶えてくれました。」と語っている。長年、声の芝居でキャラクターに命を吹き込んできた彼女が自ら変身し、ヒーローとして戦う。本作には、彼女の幼い日の憧れと今も変わらぬ情熱が息づいている。
このほかにも『侍戦隊シンケンジャー』では、敵幹部の一人・薄皮太夫の声を、朴ロ美さん(ロは王へんに路)が担当。劇中では、薄皮大夫の人間時の姿を顔出しで演じた。舞台等での演技経験も豊富な朴さんだが、その鬼気迫る演技は、歴代戦隊屈指の名シーンとして、ファンの心に刻まれている。
特撮の多くは、撮影後にアフレコ(アテレコ)の工程を経て完成する。俳優が自らの演技、あるいはスーツアクターの動きに声をあてるこの作業は、声優の仕事と非常に近い。身体で感じた感情を、声でもう一度表現する。このプロセスが、俳優と声優、双方の表現力を磨き上げているのだろう。
マイクの向こうから響くその声には、かつて変身して戦ったヒロインたちの息づかいが、今も確かに宿っている。


