■主人公・大神一郎の魅力

プレイヤーが操る主人公・大神一郎

 さて、そんな個性豊かでそれぞれのかわいさを持つキャラたちと交流し、かわいい女の子たちを選べる立場にある主人公・大神一郎なのですが、主人公を「プレイヤー」にせず「大神」にしたことはこの作品においてとても大きな決断であったと思います。

 プレイヤーと恋愛しているのではなく、「大神一郎」を通した恋愛模様をはたから見るという構図になるのはある種でデメリットにもなりうるポイントではありますが、この大神というキャラクター自身も魅力的なので、デメリットなどみじんも感じさせません。

 新任少尉ながら隊長を任され、華撃団の面々を率いつつ、士官学校での訓練の成果からか武術にも長け、頭も良いという超エリートなのに、それを一切鼻にかけておらず、仲間思いで優しく、体が勝手に女風呂へと向かってしまう普通の男の子であるところがプレイヤーから愛される理由でしょうか。

「体が勝手にシャワー室に……」

 とにかく彼が自分の分身として作中で活躍する様は、心が震えます。ハーレム状態で超エリートにもかかわらずこんなに嫌われない男性はなかなかいませんよ。(自分で操作できるからかもしれませんが)

 華撃団・花組の面々には、それぞれのストーリーで様々なバックボーンが明らかになっていきます。彼女が今なぜここにいるのか、どうして戦っているのか、何を感じているのか。それらを踏まえたうえで物語がどんどん熱い展開になっていきます。この辺が「ギャルゲーだけどギャルゲーじゃない」という感じでしょうか。バトル+恋愛というゲームにおいて、シナリオがこれだけしっかりと描かれていて、かつ演出もお洒落で斬新、アニメもきれいでBGMもかっこいいという作品が今から24年も前に発売されているという事実にはもう脱帽です。

 そうしたシリアスな展開と、日常でかいま見えるふとした女の子らしいところのバランスが絶妙で、この6人の人気も「誰かが劣っている」「誰かが一人群を抜いている」ということはほとんどありません。少なくとも私の周りで「○○はねーわ」という声や「○○一択だろ」という声はなく、好きなキャラの話をするとみんな「あーなるほどね。分かるわあ」となります。

 それだけそれぞれのキャラごとに違った魅力があり、6人しか選べませんが誰がプレイしても1人は推しが見つかるような構成になっているのは素晴らしいですね。みなさんもぜひプレイして、推しを見つけてください。

 ちなみに私は何度も言いますが李紅蘭です。

 彼女は花組ではお笑い役で、気配り上手な中国出身の女の子です。いつも元気に舞台装置や兵器を作り、それを爆発させて黒コゲになっている彼女ですが、そんな彼女にも悲劇的な過去と大きな夢があって……。

 これ以上は言えませんが、彼女との会話イベント・そしてエンディングは本当にほほえましいです。本当になぜメインシナリオを用意してもらえなかったのか……。(ちなみにのちのリメイクでは追加されました!)

 そして、このゲームの特徴の1つとして忘れてはならないのがLIPSというシステムです。これは作中で大神がとる行動を選択するときに時間制限が設けられているというシステムのことで、制限時間内に選ばないと「選ばなかった」という「選択肢」になるというものです。

 制限時間ギリギリで答えると、反応が変わる場合もあるなどこだわりが見えるシステムで、これによって展開が変わる場合もあります。このテンポ感とプレイヤーの気持ちや迷いが反映されるシステムはかなり斬新で、ただ選ぶだけの会話イベントと比べると没入感が段違いです。

 プレイすれば分かりますが、「いや大神よ、どっちも違くないか!?」と思うような選択肢が出てくるときもあります。そんなときはハンター試験のクラピカのごとく、「答えは沈黙」としてみましょう。選んだほうが絶対いいですけどね。

 こうしたシステムの工夫や、彼女たちが「大神だけに見せる顔」と戦闘時のギャップなど、本作にのめりこんでいく要素としてキャラクターたちの魅力が大きいことが分かります。

『サクラ大戦』の話を誰かとすると、やっていない人は結局どんなゲームなのかイマイチつかめていないことが多く、プレイしたことがある人も何を説明したらいいのか迷って「とにかくプレイして!」としか言えないことがとても多いのですが、もし薦めるのであれば「超面白いアニメの結末を自分でプレイできる」と教えてあげましょう。キャラの魅力に負けないパワーを持つ熱いシナリオも必見ですよ。

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