■「神様の交通整理」が楽しい、バッドエンドを見るために遊ぶゲーム!?
本作はゲームシステムの仕様上、何度もバッドエンドを見るハメになるでしょう。もはや「バッドエンドを見るゲーム」と言っても過言ではないくらい、バッドエンドを見ることになります。いわば「死にゲー」です。ですが、バッドエンドを見れば見るほど、このゲームはどんどん面白くなっていきます。
バッドエンドの選択肢を選ぶと、そのシナリオの主人公にとって最悪の結末をたどってしまうのですが、その後にヒントが出ます。そのヒントの文章が絶妙で、「あ、あいつをこうすればいいんだ!」とひらめいたときは早くその主人公のストーリーを進めたくなります。
そして、その主人公のストーリーを進めると別のところでつまずいてしまい、バットエンドになる、みたいな現象を何度も繰り返してシナリオを進めていくのです。この「神様の交通整理」が非常に楽しい。
バッドエンドは全部で100種以上存在し、その状況に応じてシリアスなものからコミカルなものまでさまざまです。
たとえば桂馬のバッドエンドは爆破が起きたり、美子のバッドエンドは見ようによってはハッピーエンドだったり、市川のバッドエンドは目を覆ってしまいたくなるほど恐ろしいことが起きたりと「本当に1つの作品なのか?」と思うほどバラエティに富んでいます。
このバッドエンドコンプリートが本作のやり込み要素でもあるので、本作をプレイした方はぜひ全種コンプしてみてください。バッドエンドを集める作業がこんなにも面白いゲームはなかなかありませんよ。
■お楽しみ要素はまだまだ!
先ほど市川役をダンカンさんが演じていると紹介しましたが、本作にはほかにも有名な方が多く出演されています。たとえば、美子役は北陽の伊藤さおりさんが演じていたり、当時はまだヨースケ名義で活動していた窪塚洋介さんが脚本家志望の青年・サギ山を演じていたりします。他にも数多くのキャラクターがいるのでぜひチェックしてみてください。
また、今挙げたサギ山のように8人の物語の中で共通する登場人物が出てくることがあります。シナリオの主人公は8人ではありますが、シナリオを進行していく上で欠かせない人物は他にもたくさんいて、そして彼らもある人物にとって重要な選択肢の1つになっていることも多いのです。
なので『街』は、けして8人の物語ではありません。作中に登場したすべての人物の行動が描かれており、その原理原則がどこかでつながっているのです。本当に緻密に計算し、練り上げられたシナリオとシステムには頭が下がります。
もしも本作を知らなかった、または「実写ゲーム」だからと敬遠していた方がいらっしゃったらこの機会にぜひチェックしてみていただきたいです。ふだんサウンドノベルをやらないけどゲームが好きな方、またはゲームの操作が苦手だけど物語を楽しむのは好きな方、とにかくオススメです。きっとあなたのゲーム人生の中に、深く深く刻まれる強烈なインパクトを残してくれることでしょう。