■リアルな見た目と、ハチャメチャな仕様!
初めて『燃えプロ』をプレイしたとき、投球や打撃フォームが実在の選手にかなり似せて作られていることに感動したことを覚えています。そしてファミコンの電源を入れると、いきなり「ペボー!」(“プレイボール”と言っているのが自分にはそう聞こえた)としゃべったことに驚いた人も少なくないはず。ファミコンソフトで音声を再現するゲームは、まだ珍しい時代だったんです。
メインとなるプレイ画面はまるでテレビの野球中継を見ているような視点で、デフォルメされた従来の野球ゲームとは一線を画すとてもリアルなグラフィック。さらに合成音声によってしっかりと審判や観客の声まで再現され、臨場感はバツグンでした。
ただし、グラフィックやボイスのリアルさとは裏腹に、肝心の野球としてのリアルさが欠けていたのはいただけない……。その一例が、各球団ごとに1人ずつ設定されていた「ホームランバッター」というシステム。このホームランバッターのバットにボールが当たると、かなりの高確率でホームラン性の当たりが出るという、とんでもない仕様でした。
阪神がモチーフのチーム「HT CLUB」ならバース、ヤクルトがモチーフの「YS CLUB」ならホーナーがホームランバッターに設定されていて、逆にそれ以外の選手はどんなに打撃成績が良くても、そこまで能力は変わらないイメージ。
ライオンズがモチーフのチーム「SL CLUB」なら、打率.316 HR41本の「アキヤマ」がホームランバッターに設定され、カンタンにホームランを量産できるのですが、同じくらいの成績である打率.325 HR40本の「キヨハラ」は、ほとんどホームランが打てないという困った仕様……AK砲、どうしてこうなった。
そして、この「ホームランバッター」システムこそが、野球ゲーム史に残る“伝説”を生み出すことになるのです。