今年は『ファイアーエムブレム』シリーズの初代、ファミコン版『暗黒竜と光の剣』の誕生から30周年という節目の年。一連のシリーズをプレイしたことのない方でも、『ファイアーエムブレム(FE)』の名は一度は耳にしたことがあるはず。
一般兵に至るまで固有の顔グラフィックを持ち、重厚なストーリーを演出。何より「一度死んだキャラは二度と戻らない」というストイックなゲームシステムは、プレイヤーにガチの緊張感を与え、CMのうたい文句「手ごわいシミュレーション」に偽りなしの傑作です。今考えても、とても30年前に生まれたゲームとは思えない完成度の高さでしたね。
そして今日5月14日は、FEシリーズ4作目となるスーパーファミコン版『ファイアーエムブレム 聖戦の系譜』(1996年発売)がリリースされた記念すべき日でもあります。
この『FE聖戦』はシリーズ中でもかなりクセの強い作品で、FE好きの中には「聖戦の系譜が一番好き」と語る人はけっこういます。
……何を隠そう、私がその一人です。
■あまりにも報われない主人公の悲哀
従来のFEシリーズのストーリーは、帝国の圧政から人々を解放するために主人公が挙兵し、国を救って英雄になるという比較的オーソドックスな英雄譚が多いのですが、本作はちょこっと違います。
『FE聖戦』の物語は、“前・後編”の二部構成。前半の主人公は聖戦士の血を受け継いだ国の当主の息子「シグルド」です。出撃中の父から留守を任されたシグルドですが、そんなときに美しき幼なじみの女性・エーディンのいる城が襲われ、シグルドは出陣します。
この前半のスト―リーでは、いくらシグルドが勝ち進んでも、忠誠を誓っている王国の悪政に利用されるばかり。シグルドが勝利すればするほど退路は断たれ、孤立して不幸になっていくというダークな展開になります。そんな報われないシグルドは、数あるシミュレーションRPGの中でも屈指の「不幸な主人公」と呼ばれることに……。
そして、その17年後、シグルドの無念を晴らすために、息子の「セリス」が主人公となって挙兵するところから後半戦がスタート。ここからはいつものFEシリーズらしい、世直し快進撃が始まるのです。
また、この世代交代によって仲間キャラがゴッソリ入れ替わるところも『FE聖戦』の大きな特徴。それまで育成したキャラが一気にいなくなるので賛否の分かれるところではありますが、物語の中での“時間の流れ”を感じられるので、私は気に入っている要素です。