■チェコでは本が贈り物

大西 2015年にプラハへ行ったときは、『NARUTO』の人気がすごかったですね。大型書店の棚にずらりと並んでいて。

ホリー 『NARUTO』は大人気ですね。チェコのコミックスは一冊200~300コルナなので、1000円以上します。けして安くはないものなのですが。チェコでは、本をプレゼントする習慣があるんですよ。だから、マンガ単行本はプレゼントにちょうどいいんです。日本ではそういう習慣はありませんね。ずっと以前、わたしが(日本人の)妻と結婚する前、誕生日に本をプレゼントしたんですよ。そうしたら「えっ、本?」って(笑)。けげんな顔をされました(笑)。

東京・荻窪の自宅書斎からのペトル・ホリー氏。

――そうでしょうね(笑)。

大西 でも、ぼくも妻へのプレゼントでほかに何も思いつかないときは本を贈りますよ(笑)。

ホリー そういえば、いま、チェコで革命以前……それこそ第二次世界大戦前からのマンガのアンソロジーがいっぱい出てるんですよ。分厚い本で、値段も高いんですが、「どういう人が買ってるんですか?」と出版社に聞いたら、とても興味深くて……たとえば老人ホームなんだそうです。

大西 へー!

ホリー 認知症の人が、自分が子どものころ読んだマンガには反応するんですって。「あ、これ知ってるよ!」と。何か月も何も話さなかったような方がですよ。精神科医によると、マンガにはそういう力があるんだそうですね。

大西 ぼくも将来、認知症になったとしても、昔のマンガを読んだら記憶がよみがえりそうです(笑)。

ホリー 小説だとそうはいかないですけど、絵は見ただけで、初めて見た当時にタイムスリップしてしまうんですね。日本のものでもチェコのものでも……マンガは魔法の力を持っているんですね。

(後編は5月15日公開予定)

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