■強くてイケメン、優しいライバルとして描かれた『ガンリュウ』
山根和俊氏の漫画『ガンリュウ』において、武蔵は身なりもみすぼらしい浪人として登場する。だが、その正体は、主人公・佐々木小次郎のライバルであった。彼は町で小次郎と出会い、突如襲いかかってきた60人もの極道集団をたった1人で返り討ちにするほどの実力を見せる。
すでに剣豪として名を馳せていた武蔵は、真空の刃で遠く離れた敵を斬る「空牙」の使い手である小次郎と真剣勝負がしたいと願い出る。
離れ島での対決において、武蔵は小次郎の長い太刀が接近戦に弱いと見て策を練る。そして、船で島に渡ると見せかけて実際には海中から近づき、一気に間合いを詰めて近接攻撃を挑んだ。イケメンの好青年に見えて、その戦い方はなかなかしたたかである。
武蔵の鋭い二刀流に苦戦した小次郎は、鉛でできた籠手を外して体を軽くし、飛び蹴りを放って距離をとる。小次郎が「空牙」を放とうとした瞬間、武蔵は火縄銃による狙撃に気づく。そして、小次郎の注意が逸れた隙を突き、武蔵は小次郎を斬りつけた。
このように、2人の対決は、柳生一族の刺客によって邪魔されるかたちで中断されてしまった。2人は傷が癒えたあとの再戦を誓い、武蔵は再び修行の旅へと戻っていった。
その後、武蔵は名を上げようとするあまたの刺客たちに襲われながらも、剣術の腕を磨いていく。分身の術を使う忍者・毒狸との一戦では、「本物がどれか分からないならすべてを斬る」と言い放ち、瞬殺。また、200人ほどの柳生忍軍をすべて一刀で斬り伏せ、魔物・禍鏤魔(かるま)に取り憑かれた拳法の達人・服部半蔵を打ち破るなど、作中最強の剣術を遺憾なく発揮する。
本作の武蔵の特筆すべき点は、圧倒的な強さだけではない。彼はムダな血は流したくないという優しさも持ち合わせていた。強者との戦いを望む一方、むやみに人を斬ることはしないのである。
残念ながら、物語は小次郎との再戦を前に完結してしまったが、多対一でも圧倒的な実力で敵を倒していくその姿は、まさに最強の名にふさわしいものであった。
「宮本武蔵」という存在は、日本の歴史上もっとも有名な剣豪の1人であり、最強を究めた求道者として認識されている。彼の名は強さの象徴であり、創作物に登場するだけでテンションが上がってしまう。いわば“漢のロマン”をかき立てる存在といえるだろう。
ここで紹介した3作品の武蔵像はどれも異なるが、「天下無敵の強い剣豪」という点は共通している。今後、どのような新しい「宮本武蔵」が漫画作品に登場するのか、引き続き注目していきたい。
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