日本の歴史上、最強の剣豪といえば、多くの人が「宮本武蔵」の名を挙げるだろう。そんな武蔵が現代に蘇り大活躍するのが、2月26日からNetflixで独占配信されているアニメ『刃牙道』(原作:板垣恵介氏)である。
東京スカイツリーの地下366mにある研究所にて、最新のクローン技術によって伝説の剣豪・宮本武蔵が復活。現代の格闘家たちや警察を相手に、縦横無尽の強さを発揮するのである。
まさに強さの象徴でもある宮本武蔵は、『刃牙道』以外の漫画作品にも登場する。それぞれの作品ごとに描かれた、さまざまな「宮本武蔵」の姿を紹介していこう。
※本記事には各作品の内容を含みます。
■闘う鬼から求道者へ…『バガボンド』
井上雄彦氏の漫画『バガボンド』では、鬼の如く闘いに明け暮れる武蔵が描かれている。同郷で友人である本位田又八とともに武芸者として名をあげることを夢見ていたが、参戦した関ヶ原の戦いで敗北。又八と身を寄せた民家に押し寄せた賊を打ち倒し、その並外れた強さを見せつけた。
我流の戦いでありながら、多対一という劣勢をものともせず敵を圧倒する武蔵の暴れっぷりは、読んでいるこちらまで興奮してしまうほど迫力満点。
誤解から役人や故郷の村人に追われる身となった武蔵は、自我が崩壊するほど人を斬り続け、ついには僧である沢庵宗彭に捕縛されてしまった。
沢庵の厳しい説法を受け、武蔵は内面の変化を遂げていく。幼少期、彼は別れた母親に一目会いたいと願うも困惑され、父親のところへ帰ってほしいと告げられた過去があった。そして彼は、「心が揺らがず一人で生きていけるように誰よりも強くありたい」と、天下無双を目指すことを誓ったのである。
こうした描写は武蔵が人知れず抱える深い孤独を浮き彫りにしており、感情移入させられた読者も少なくないだろう。
沢庵から解放された武蔵は武者修行の旅に出て、強者を求めて京の吉岡道場に立ち入る。そこで当主・吉岡清十郎と相まみえるも、天才的な剣技にあしらわれてしまう。
その後も武蔵は、宝蔵院流や柳生一族といった強敵と死闘を繰り広げていく。時には追手に襲撃されながらも戦い続け、命をつないでいく日々を送るのだ。
その姿はもはや天下無双を目指すだけの剣士ではなく、心身を傷つけながら「なぜ戦うのか」を問い続ける求道者のようであった。単に剣の強さだけでなく、内面の葛藤まで描いた点こそが、『バガボンド』における宮本武蔵像の大きな特徴といえるだろう。
■陸奥圓明流に引き分けを認めさせた『修羅の刻』
川原正敏氏による漫画『陸奥圓明流外伝 修羅の刻』では、武蔵は強者を求めて旅を続ける最強の武芸者として描かれ、陸奥圓明流の継承者・陸奥八雲の前に立ちはだかる。
作中、武蔵は山茶屋で刺客と遭遇。その刺客は、とある城の跡目争いに巻き込まれた若姫を狙う者であった。同じ山茶屋に居合わせた八雲が箸でハエを捕らえるのを目にした武蔵は、実力を見せつけるかのように彼の前で刺客を一刀両断に斬りつける。
頭蓋骨から胴体までを両断するほど凄まじい斬撃であったが、八雲は瞬きすらせずにそれを見つめる。その底知れぬ様を目の当たりにした武蔵は、彼に興味を抱くのだ。
2人が戦ったのは1年後の安芸の国でのこと。八雲が繰り出す脚技とスピードに対し、武蔵は一刀ではついていけず、二刀流を解禁。左右から繰り出される連続斬りを前に、今度は八雲が間合いに入れなくなってしまう。
一進一退の攻防の中、八雲は武蔵の左からの斬りつけをかわして刀を踏み、右正拳を繰り出した。これに対し、武蔵は胴体を目掛けて右の刀を振り抜く。まさに絶体絶命の瞬間、八雲は刀を左手で抜いて武蔵の斬撃を防ぐと同時に、奥義「無空波」を叩き込み、ついに勝利をおさめた。
陸奥圓明流を相手に刀を抜かせたのは、後にも先にも武蔵ただ1人である。八雲は彼の実力を認めて「引き分け」と告げ、去っていくのであった。
連載当時、本編にあたる『修羅の門』では、空手やプロレス、シュートボクシングなど異種格闘技のトーナメント戦で盛り上がっており、素手同士の戦いが基本だった。そのため、刀を持つ天下無双の宮本武蔵を相手に、素手の八雲がどのように戦うのかドキドキしたものである。圧倒的に不利な条件でおこなわれたこの対決は、終始見応えがあった。


