■堺雅人さんブレイク!神回と名高い「友の死」をプレイバック

 本作で最も感情を揺さぶった俳優といえば、山南敬助を演じた堺雅人さんではないだろうか。

 副長・総長を務めた山南は“新選組の良心”と呼ばれ、知性と優しさを兼ね備えた人物として知られている。だが、脱走の後に切腹という非情な運命をたどる。第33回「友の死」で堺さんは、そんな山南の最期を熱演し、涙なしでは見られない神回となった。

 当時、新選組は勢力を増す一方で少しずつ新時代の流れから外れ始めていた。新選組に尽くしてきた山南は自分の進むべき道に迷い、次第に土方らとも意見がぶつかって居場所を失い、心も離れていく。彼にとって救いは、身請けした遊女・明里(鈴木砂羽さん)との穏やかなひとときだった。 

 その後、山南は心を決めると原田と永倉に江戸に行くと告げ、“脱走は切腹”という局中法度を破って屯所を出る。脱走を知った近藤らは苦悩した。大切な仲間を殺したくないが、例外を作れば組織は崩れてしまうのだ。そこで土方は追っ手に沖田を選び、暗に彼を逃がすよう指示を出す。

 だが、明里と山南の前にわざと速度を落とした沖田が姿を現すと、山南は沖田らの想いとは逆に、静かに口元に笑みを浮かべ「沖田君ここだ」と自ら彼を呼び、死を受け入れた。沖田はこのまま逃げてと懇願し切腹など誰も望んでないと訴えるも、彼の決意は固かった。

 屯所へ戻った山南を見て近藤は悲しみ、彼を慕う隊士たちは涙ながらに救済を訴える。しかし、戻った以上、もう切腹は免れない。

 山南は穏やかに時を待ち、隙を見て自分を逃がそうとする隊士たちに微笑みながら教えを残す。「私が腹を切ることで新選組はより固まる。それが総長である私の最後の仕事です」という言葉に、土方も声を詰まらせることしかできなかった。

 そして運命の時。皆が涙を浮かべる中、山南は額に血管を浮かべながら腹を切り命を絶った。

 堺さんは山南を演じるにあたり綿密な下調べを行い、史料を読み込んで人物像を解析したという。その結果、細かな表情や所作の一つ一つから、山南の憂いと覚悟が滲み出ていた。

 また切腹の場面においては作法を何度も学び、粗相がないよう臨んだそうだ。それゆえに臨場感は凄まじいもので、多くの視聴者が息をのんで彼の最期を見届けた。そして、この役を通じて堺さんの名は一気に全国区へと広まっていき、2016年の三谷幸喜大河ドラマ『真田丸』主演に繋がっていく。

 歴史劇というよりは、一人ひとりの内面が丁寧に描かれたことで人間ドラマとしての魅力が増した『新選組!』。幕末を駆けぬけた隊士たちの生き様に惹き込まれ、見終わった後も熱い余韻が残る。気になった人はぜひチェックしてみてほしい。

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