
10月1日より、三谷幸喜脚本の新ドラマ『もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう』(フジテレビ系/水曜午後10時)がスタートする。菅田将暉さんを主演に迎えた本作は、1984年の渋谷を舞台に、二階堂ふみさん、神木隆之介さん、浜辺美波さんら豪華キャストが織りなす青春群像劇だ。
三谷作品といえば、これまでも個性的で斬新な作品が話題を呼んできた。『振り返れば奴がいる』に『王様のレストラン』(ともにフジテレビ系)など数えきれないほどの名作を手がけてきたが、豪華キャストでそれぞれのキャラクターの魅力を描き切ったのが、2004年に放送されたNHK大河ドラマ『新選組!』である。
三谷さんにとって初の大河となった本作では、若手からベテランまで幅広い俳優陣が存在感を発揮した。中には、この作品をきっかけに知名度を高めた俳優も少なくない。
再放送もなく、長らく視聴が困難だった同作だったが、9月29日から20年以上の時を経てNHKオンデマンドで初配信がスタートし、大きな注目を集めている。今回は、そんなドラマ『新選組!』の豪華なキャストとその名演技を振り返ってみたい。
※本記事は作品の内容を含みます。
■キャリアを伸ばす若手俳優とベテラン俳優の名演技が光る
史実とは異なる設定やストーリーが盛り込まれた三谷さんの『新選組!』。作中では、若者で構成された新選組と同世代の俳優たちが等身大で演じ、幕末を駆け抜けた隊士たちを鮮やかに蘇らせている。
局長・近藤勇を演じたのは当時27歳の香取慎吾さん。史実の近藤よりもソフトな印象だが、大らかさは共通点の一つではないだろうか。また、近藤はげんこつを口に入れられるという逸話があったが、香取さんもそれができるという個性的な共通点もある。
一番ハマっていたと感じるのは、土方歳三役の山本耕史さんだ。土方といえば、近藤を支える鬼の副長であり新選組随一の色男。山本さんの色気は土方に共通するし、年齢も上洛時の土方と同じ28歳だった。
武士への憧れをくすぶらせ、結成後には戦いの中で闘志を高めていく……山本さんはそうした土方の感情の揺れを時に鋭く時に繊細に演じ切った。その演技は高く評価され、のちにスピンオフ『新選組!! 土方歳三 最期の一日』も制作されている。
さらに、沖田総司役の藤原竜也さんも印象深い。一番隊組長の沖田は天然理心流道場・試衛館の塾頭を任される剣豪で、上洛時22歳ながら新選組で永倉新八に次ぐ実力の持ち主と称される人物だ。
当時22歳だった藤原さんは、舞台経験で培った緻密な演技力で波乱の人生を生きた沖田を好演。無邪気な笑顔と殺陣のギャップ、迫りくる死への向き合い方など、まるで本物の沖田が目の前にいるかのような真に迫る演技を見せる。
オダギリジョーさんが演じた、寡黙ながら熱い闘志を秘めた三番組長・斎藤一も欠かせないキャラの一人だ。とりわけ心を揺さぶられたのが甲州・勝沼の戦いである。永倉と原田が去り隊が崩壊しかけたその時。斎藤が「この旗がある限り新選組は終わらない!」と声を上げたのだ。感情をあらわにする彼に胸震えたという視聴者は少なくないだろう。
一方で、ベテラン俳優たちの凄みと安定感も作品の深みを増す重要な要素となった。
中でも、豪胆で荒々しい気性を持ち、結成当初の新選組でカリスマ的存在感を放つ芹沢鴨を圧倒的な迫力で演じた佐藤浩市さんは印象的だ。ただの暴君ではなく、時折見せる優しさや強さの裏に隠された哀しさと弱さをあそこまで体現できるのは、佐藤さんだからこそ。
また、粛清が迫ってからの芹沢の言動はすべてが胸を打つものであった。自身を倒すことに戸惑いを感じている近藤に気づいた芹沢は、「鬼になれよ近藤」と彼を鼓舞する。殺されることを受け入れた上で、自分を超えろと発破をかけたのだ。そして、寝込みを襲いにきた沖田らと繰り広げる死闘で見せた俊敏な殺陣は、息をのむほどの緊張感を漂わせていた。
そんな若手の熱気とベテランの貫禄がぶつかり合ったことで、本作の生気あふれる戦いと人間ドラマがより美しく彩られたのだ。