
「復讐」は日本の法律において認められていない。そのため、どれほど他人から嫌がらせを受けても、理不尽な目に遭っても、涙をのんで我慢している人が現実である。
しかしそのようなイライラした気持ちを晴らすべく、ドラマではあの手この手を使って恨むべき相手に復讐を果たす話もある。特にバブル崩壊後の90年代は、社会の閉塞感を打ち破るような過激な復讐劇も展開され、見ることで溜飲が下がった人も多かっただろう。
今、見返してみると「それはやりすぎでは……」と思える復讐劇も多かった90年代のドラマ。ここではそんなドラマで展開された「驚くべき復讐方法」を紹介したい。
※本記事には各作品の内容を含みます
■土下座させたあげく自分の足を舐めさせる『もう誰も愛さない』山口智子
1991年に放送された『もう誰も愛さない』は、愛憎劇と復讐劇が絡み合うサスペンスドラマだ。
本作の主人公は金に執着した沢村卓也(吉田栄作さん)で、彼に対し壮絶な復讐を遂げていくのが田代美幸(山口智子さん)である。
美幸は真面目な銀行員だったが、沢村と宮本小百合(田中美奈子さん)の策略により、男たちに暴行され、恋人との婚約も破棄となり、あげく横領罪で逮捕されてしまう。その首謀者が沢村たちだと知った美幸は復讐の鬼となり、沢村に復讐をしていくのだ。
出所後の美幸は実業家・王小龍(伊武雅刀さん)と組み、冷酷な手腕で沢村を追い詰めていく。たとえば彼が働く観葉植物事業を買い占め、沢村を実質クビにして仕事を奪う。さらに、沢村は途中で刺されて半身不随になるのだが、美幸はそんな彼を引取り監禁状態にし、自分の支配下に置いてじわじわと嫌がらせをし続ける。
なかでも視聴者に衝撃を与えたのが「死にたくないってひざまずきなさい」と沢村に命令して土下座をさせ、ストッキングを履いた自分の足を舐めさせるシーンだろう。沢村が美幸にこれまで与えてきた苦痛を思えば、美幸の復讐心は理解できる。だがその行為は倫理的な一線を越えており、見る者に強い戦慄を与えたのは間違いない。
■愛する息子を奪った教師へ激しい暴行で復讐『人間・失格ー たとえばぼくが死んだらー』赤井英和
1994年7月からTBS系列で放送された『人間・失格ーたとえばぼくが死んだらー』は、愛する息子を失った父親が、息子を死に追い詰めた人間へ激しい復讐をするドラマだ。
主人公・大場衛(赤井英和さん)の息子・誠(堂本剛さん)は名門中学に編入後、凄惨ないじめに遭い、自ら命を絶ってしまう。誠を死に追いやったのは同級生だけでなく、体育教師・宮崎(斎藤洋介さん)の激しい体罰も要因であった。
真相を知った衛は、宮崎をプールの中で追い詰め、ラーメンの出前で使う“おかもち”の箱を振りかざして暴行し、さらに宮崎の頭をプールに何度も沈める。
「やめてくれ!」と懇願する宮崎に対し「俺の息子もそう言ったはずや!」「やめてくれと頼んだはずや!」と叫びながら、何度も宮崎の頭をプールに沈めるのだ。もともとプロボクサーである赤井さんの演技は鬼気迫るものがあり、相手をノックダウンするような激しい復讐方法は見ていて鳥肌が立った。
結局宮崎はこの暴行が原因で命を落とす。息子の復讐を遂げ、本懐を果たしたはずの衛だが、夜になると自身の犯した行為が脳裏をよぎり、激しい苦悶に苛まれ続けるのである。