■逆恨みから始まった常軌を逸した復讐劇『冷たい月』中森明菜
1998年に日本テレビ系列で放送された『冷たい月』は、女性の深い執念を描いた復讐ドラマだ。
椎名希代加(中森明菜さん)は、ニュースキャスターの夫・公平(辰巳琢郎さん)と幸せに暮らす妊婦だった。
しかし公平はひき逃げ事故を起こし、その一部始終を妊婦の森下美咲(永作博美さん)に目撃される。美咲が警察に通報したことから公平は自ら命を絶ち、希代加はストレスが影響したのか流産し、子どもを生めない体になってしまう。すべての不幸はひき逃げを通報した美咲だと逆恨みをした希代加は、そこから恐ろしい行動に出るのだ。
希代加の復讐は、美咲の隣人になることから始まった。それまで隣人であった心臓を患う老婆を脅して死に追いやり、その家に居座ると、美咲の家に忍び込んでは日記を盗み見、巧みに夫婦仲を引き裂いていく。
ついには美咲を追い詰め、自分をナイフで刺すよう仕向けて逮捕させる希代加。それまで美咲の夫と子どもを懐柔していた希代加は、まんまと森下家の妻の座に収まるのだった。
夫の自殺と自身の流産を逆恨みした希代加が、美咲のすべてを奪い去っていくこのドラマ。彼女が言い放った「あなたには死ぬよりもつらいことがあるのを知ってもらわなくちゃね」というセリフは、その後の常軌を逸した行動と相まって、視聴者に背筋が凍るような恐怖を与えた。
今回紹介したドラマは、いずれも過激な復讐方法で憎む相手に制裁を与えている。今、見返してみると少々やりすぎとも思える描写であったが、当時の視聴者の中にはその痛快さに心が晴れた人もいるだろう。
しかし、復讐を果たした彼女たちは、最終的にハッピーエンドを迎えたわけではない。やはり過激な復讐は決して幸せには結びつかないことを覚えておきたいものである。