
『3年B組金八先生』(TBS系)、『女王の教室』(日本テレビ系)、『GTO』(フジテレビ系)、『御上先生』(TBS系)――と、時代を問わず、ヒット作を生み出した学園ドラマ。生徒と教師が心を通わせていく過程は視聴者の心を揺さぶるもので、自分の学生時代と比べながら見ていたという人も多いだろう。
数えきれないほどの名作が生まれてきたジャンルだが、中でも今回は1996年にフジテレビ系で放送された『みにくいアヒルの子』に注目したい。同作は、東京の小学校を舞台に、さまざまな悩みを抱える子どもと岸谷五朗さん演じる、ガー助こと教師・平泉玩助の関わりを描いた感動作だ。
どのエピソードも泣けるといっても過言ではないほど心に刺さる作品だが、残念ながらDVD化や再放送がなく、現在では視聴困難なドラマになっている。今回は、そんな隠れた名作『みにくいアヒルの子』を振り返ってみたい。
※本記事は、作品の核心部分の内容を含みます。
■等身大で生徒と向き合う純粋な教師・平泉玩助という男
ドラマで描かれる教師は熱血タイプからクールタイプまでさまざまだが、ガー助はそのどちらにも属さない。捨て子だったガー助は、孤独や仲間の大切さを知っているからこそ、自分の弱さもさらけ出しながら等身大で子どもと向き合う。ガー助は生徒みんなが持っている、誰にも負けない「一番星」を見つけてあげる先生で、彼の眼差しの暖かさが視聴者の胸を打つのだ。
物語は、そんなガー助が北海道・女満別で教師をしていた頃に起こった悲しい事件から始まる。
あるとき、両親の離婚で叔母に引き取られていた教え子の清が、東京で暮らす父親の元に引っ越すことになった。女満別の友だちは明るく彼を送り出したが、東京で清を待っていたのは父の新恋人からの冷遇とクラスのいじめだった。
後日、ガー助は東京に出向いた際に清と再会を果たす。清は元気を取り戻すが、ガー助がふと冗談混じりに言った「いじめられてるんだよ」の言葉で「大人になってもいじめられるの?」と表情を変える。
ガー助は愛するマチャコこと松永まさ子(常盤貴子さん)が相手にしてくれないことの愚痴のつもりだったが、清にとっては絶望的な言葉として響いたのだ。だが、優しい清は自分のことを一切言わずに落ち込むガー助にエールを送る。
一人になり清は泣いた。そして、ガー助からもらった「一番星の冠」と北海道時代の写真を見つめてマンションの屋上から飛び降りてしまうのだった。
訃報を受け取って深く悲しみ、SOSに気づけなかった自分を責めるガー助。そして1年後、ガー助は東京のあやめ台小学校4年3組の担任になる。都会のクラスは人数も多く、北海道の子どもとは育ち方も価値観も違う。ガー助は戸惑いながらも、「いい生徒より幸せな生徒になろうぜ」という信念のもとさまざまな問題に立ち向かっていく。
同作の主軸はガー助と生徒だが、天真爛漫なマチャコが重要な存在として描かれている。おバカだが彼女はガー助の支えであり、彼女の言葉に見ているこちらも気づかされることが多い。そして、同僚の教師・沢木茂(河相我聞さん)も素晴らしい。控えめな彼がガー助を見て変わり、教師として目覚めていく過程は見どころだ。