■子役の演技力の高さもまた泣かせる…感動のクライマックス
クラスがまとまりだしたあるとき、大問題が勃発する。「人間誰でも必ずいいところがある」ガー助はこの言葉を大切にしていたが、自信のある子ばかりではなく、クラスメイトの高寺聖也は自分の“一番星”を見つけられずにいた。そんな聖也が、転校生の青木剛にいじめられてしまうのだ。
とはいえ、剛もいじめが原因で転校してきた生徒だった。彼が言った「先生も僕が弱いからだって、弱い人間はいじめられても仕方ないって。だから強くなりたくて」という言葉からも、彼が苦しんでいることがわかり、過去に誰かが剛を救えていれば……と考えさせられてしまう。
一方の聖也も苦しみ、剛のナイフを奪ってガー助に「これは僕の一番星だ。僕には何もいいとこないから。これがあれば僕は強くなれる」と言う。聖也なりの、精一杯の自己防衛だ。だが、このナイフが事故でガー助に刺さってしまう。ガー助はフラフラになりながらも、聖也に「本当に強い人間ってのはどういう人間かもう一回よく考えとけ」と諭すのだった。
そしてガー助は、学芸会で剛と聖也を主人公にした「みにくいアヒルの子」の劇を提案する。練習中にいじめがフラッシュバックする剛を見た聖也は、ガー助に言われた「本当に強いやつは一番難しいことが出来るやつよ。人を許すってすげぇ難しいよな」という言葉を思い出し、彼を許すのだった。
傷が開いたガー助が倒れたり、剛がいじめを独白したりとトラブルに見舞われながら迎えた本番。剛は過去を思い出し「どうして僕をいじめるんだろう」とセリフを言いながら涙ぐむ。生徒たちはそんな彼に一番星のポーズでエールを送り、剛は「僕だって生きてるのに!」と魂のセリフを言い切るのだった。
終演後、「皆のここ(心)に届いたか?」と伝えるガー助。彼は、劇を通じていじめられる人の気持ちを理解させ、剛のことも聖也のことも救おうとしたのだ。号泣必至の名場面である。
改めて感じたが、子役の演技力が高いのもストーリー性が深まる理由だ。全力で役に身を投じているのがわかるので引き込まれてしまう。ちなみに、すでに引退している人も多いが、中には伊藤淳史さんら有名俳優も出演している。
ガー助は、それぞれが「一番星」を見つけ、他者を受け入れることの大切さを教えてくれた。誹謗中傷が問題視される現在も、こういった考え方は大切かもしれない。
また、同作は松山千春さんの主題歌『君を忘れない』が感動の演出効果をもたらしている。大人になって見返すとまた響き方も変わる『みにくいアヒルの子』。ぜひ再放送してほしいものだ。