アニメと実写の脚本の違い
──小林さんはアニメの『ジョジョ』関連で、アニメと実写作品の両方脚本を書かれています。このケースは珍しいと思うのですが、アニメと実写の脚本の書き方にはどんな違いがありますか?
小林:う~ん。一緒ですね。ただフォーマットが違う部分はあります。アニメは 20 × 20 で原稿用紙形式の何枚っていう数え方をするんですね。でも、実写はもうちょっと1行が長いとか、印刷台本形式で書くとか、そういう形式の違いはあります。
──では、自分の中で、これは実写、これアニメという、特に描き分けはしないということでしょうか?
小林:考えてみると、実写の場合は受け入れられやすいものにするためにハードルの高さを調整するということはありますね。アニメだと、漫画のコマをそのままアニメにしちゃっても成立するんです。たとえば、拳を握りしめて「うぉ~!」と言っているだけで、なんとかなるんですね。でも、実写で同じことをやったら、違和感がある。つまり、コマとコマの埋め方が違い、セリフの分量とか芝居の掛け合いとか、そのあたりが違います。それに、声優さんの演技と、俳優さんの演技も違いますね。
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小林さんの言葉はどこか淡々としていて、自分の個性や感情を前に押し出すことはない。だがその実、シリーズに対する構成の意識は緻密で、キャラクターの配置や語り口の設計には一貫したポリシーが貫かれていることがわかる。原作を尊重しつつも映像表現に必要な割り切りを恐れない姿勢は、その脚本術の中核にあるものなのかもしれない。
こばやし・やすこ。
1965年生まれ、東京都出身の脚本家・漫画原作者。1993年に『特捜ロボ ジャンパーソン』で脚本家デビューし、1998年の『星獣戦隊ギンガマン』でスーパー戦隊シリーズ初のメインライターに抜擢される。以降『未来戦隊タイムレンジャー』『侍戦隊シンケンジャー』『仮面ライダー龍騎』『仮面ライダー電王』『進撃の巨人』『ジョジョの奇妙な冒険』「岸辺露伴は動かない」など特撮・アニメ・実写を問わず活躍。キャラクターの感情に寄り添った丁寧な描写と、物語全体を緻密に組み立てる構成力に定評がある。
作品情報
『岸辺露伴は動かない 懺悔室』
5月23日(金)全国公開
監督:渡辺一貴
出演:高橋一生
飯豊まりえ/ 玉城ティナ 戸次重幸 大東駿介 Andrea Bellacicco /井浦新
原作:荒木飛呂彦「岸辺露伴は動かない 懺悔室」(集英社ジャンプ コミックス刊)
脚本:小林靖子
音楽:菊地成孔
配給:アスミック・エース
公式サイト:https://kishiberohan-movie.asmik-ace.co.jp/
