
ドラマ全4シーズンと劇場版『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』に続く、シリーズ最新作となる『岸辺露伴は動かない 懺悔室』(監督:渡辺一貴さん)が、5月23日(金)から全国の劇場で公開中。これにあわせ、実写版「岸辺露伴」シリーズの脚本を手掛け、多くのファンの心を掴む作品世界を作り上げた小林靖子さんに話を聞いた。
小林さんは『仮面ライダー龍騎』や『進撃の巨人』、そしてアニメ版『ジョジョの奇妙な冒険』など、数々の作品の脚本、シリーズ構成を手掛け、実写版「岸辺露伴」シリーズを作り上げていた人物である。そんな彼女に、短編を映画化するうえでの発想の出発点、高橋一生の演技との向き合い方、泉京香というキャラクターの設計、さらに原作者・荒木飛呂彦との距離感などについて語ってもらった。
映画『懺悔室』、脚本のスタート地点
──「岸辺露伴は動かない」シリーズの劇場版最新作『岸辺露伴は動かない 懺悔室』が公開されます。この新しい作品の脚本作りについては、どのようにアプローチされたのですか?
小林靖子(以下、小林):最初から『懺悔室』を映画化することは決まっていました。そこで、あの短い原作をテレビドラマよりも長い映画の尺に膨らませなければならないということがもっとも大変だったところでしたね。まずは、監督さん、プロデューサーさんを含めて、原作の「岸辺露伴は動かない」の他のエピソードを持ってきて、膨らませられないかということを話し合いました。
──具体的に、どのエピソードを検討したのですか?
小林:『岸辺露伴 グッチへ行く』という『懺悔室』と同じくイタリアを舞台にした作品があるので、それを付け加えるかどうかというところから始めました。でも、『~グッチへ行く』は『懺悔室』とは全く違うエピソードなので“いくら同じイタリアが舞台だからといって、尺のために『~グッチへ行く』のエピソードを消化するのもよくない”ということになりました。
全然違う能力を入れてしまうと、能力バトルモノっぽくなってしまいますし。『懺悔室』と『~グッチへ行く』の不思議な能力(※)のスタンドバトルという感じになってしまうと、「岸辺露伴」シリーズとは違うものになってしまうだろうと。だから、ここは『懺悔室』一本で行くべきだという結論にたどり着きました。
※『岸辺露伴 グッチへ行く』では、露伴の祖母の形見であるグッチのバッグとバッグに宿ったスタンド能力が登場する
──では、『懺悔室』をいかにして膨らませたのでしょうか?
小林:それが、この『懺悔室』に限っては原作の漫画に手を加えて膨らませても意味がないと感じたんです。完成されすぎているパッケージなので、下手にいじると流れを阻害してしまうのではないかと。だから、原作はまったくそのまんまやろうと。「じゃあ、それ以外をどうするか?」ってなった時に、原作の“その後”を拾うことにしました。露伴も「この後、どうなるか取材してみるのもいい」といったことを言っていたので、そこを手がかりにして膨らませていった感じですね。