■早すぎた「ゾンビ」もの? 第33話「侵略する死者たち」(脚本:上原正三/監督:円谷一)
防衛基地周辺では、ホルマリンの匂いを漂わせ、顔の青ざめた人々がフラフラと車両の前に飛び込んでくるという奇怪な事故が頻発していた。しかも、その全員がすでに死亡しているという。
ウルトラ警備隊はさっそく調査に乗り出すが、その裏には機密情報が収められたマイクロフィルムを狙い、暗躍する者の存在があった。
暗闇のなかを死者がうめき声をあげながらフラフラと歩く様は、現代のゾンビ映画を思わせる。だが、当時はまだ「ゾンビ」という存在がホラー映画の主流ではなかった時代。ゾンビ映画というジャンルが確立されるのは、1978年公開のジョージ・A・ロメロ監督による『ゾンビ』以降とされていることを考えると、10年ほど時代を先取りしたことになる。
不穏なBGMで恐怖を煽り、影が不気味にうごめく演出やウルトラセブンが小さくされて、コップの中に閉じ込められるという衝撃展開もあった。明らかに異様な空気を醸し出したエピソードで、もしかしたら、のちの「ゾンビ映画」にも影響を及ぼしているかもしれない。
■世相を反映した描写がリアル…第47話「あなたはだぁれ?」(脚本:上原正三/監督:安藤達己)
『ウルトラセブン』放映当時の日本は、いわゆる「マンモス団地」と呼ばれる住宅団地が急速に増加。それは子育て世代にとって憧れの存在でもあった。
しかし、隣や階下にどんな住人が暮らしているのか分からないこともしばしば。そんな団地における不安要素を具現化したエピソードが第47話の「あなたはだぁれ?」である。
『ウルトラマン』『仮面ライダー』でもおなじみ、小林昭二さん演じるサラリーマンの佐藤が深夜の団地に帰宅するも、妻と子どもは「部屋を間違えたのでは?」と漏らす。隣の奥さんも佐藤のことを知らない様子。顔見知りの人々が、誰も佐藤のことを知らないのだ。次第にこれはフック星人の策略であることが浮き彫りになっていく。
よく似た建物が軒を連ねており、本当にここが自分の住んでいる建物なのかもわからなくなる……そんな当時の団地住人たちの心配の種が見事に恐怖として表現されていた。同エピソードのラストで、佐藤が本当に部屋を間違えるシーンにも表れている。
実は「宇宙人が近所に住んでいる」という子どもなら誰もが一度は考えたであろう想像を落としこんでおり、幅広い年齢層の視聴者に訴えかけるエピソードだった。
そもそも怪獣や宇宙人というのは、もともと怪談やミステリーから派生してきたもの。だからこそ特撮ドラマにも恐怖エピソードが数多く存在していても不思議ではない。
『ウルトラセブン』に関していえば、当時のスタッフの魂が込められたエピソードが多く、視聴者をアッと驚かせてやろうという気概が大いに感じられた。