
1967年から1968年まで放送され、すでに半世紀以上が経過している作品でありながら、今もなお伝説の特撮ドラマとして語り継がれている『ウルトラセブン』。
単なる子ども向け番組と括れないほどのシリアスなストーリー、世界で称賛されたアナログ特撮の描写、そしてハマり役のキャスト陣……どれをとっても傑出した作品であるのは間違いない。
そんな『ウルトラセブン』では、全49話という1年間にわたる放送の中で、実にバリエーション豊かな話が描かれてきた。今回はそのなかから大人が今観ても「恐怖を感じる神回」をピックアップ。当時の社会情勢を加味した現実とリンクするような恐ろしいエピソードを振り返ってみたい。
※本記事は作品の内容を含みます。
■まるでホラー映画! 第2話「緑の恐怖」(脚本:金城哲夫/監督:野長瀬三摩地)
『ウルトラセブン』の第1話は、突如地球を侵略しにきたクール星人に立ち向かうウルトラ警備隊やモロボシ・ダン、そしてウルトラセブンの活躍に重きを置いたヒーロー然とした作風だった。それとは裏腹に第2話「緑の恐怖」は、少々オカルトチックな雰囲気を醸し出している。
「空から飛来した謎の物体」「怪しげな郵便配達人が届ける小包」「宇宙ステーションV3から帰還した隊員」……これらのキーポイントが複雑に絡みあい、その後に待ち受ける恐怖へと視聴者を誘う。
ホラー映画のような絵作りが印象的であり、怪奇テイストなナレーション、影の使い方、人々が緑色の樹木のような怪物へと変貌を遂げる様子も、恐ろしさを加速させる。
謎を謎のままにしながら進むストーリーはミステリーとしても秀逸で、伏線回収やミスリードを誘う描写が見事。まるでひどい悪夢にうなされているかのような感覚に陥る。
クライマックスにおけるワイアール星人とウルトラセブンによる圧巻のバトルも霞んでしまうほどの「悲鳴」が作品全体にこだましていた。
■ヒッチコック映画のような恐怖…第6話「ダーク・ゾーン」(脚本:若槻文三/監督:満田かずほ)
数多く存在する『ウルトラセブン』のスチール写真の中に、とりわけ有名な1枚がある。化粧台の前で身だしなみを整えるアンヌ隊員と、彼女を背後からつけ狙うペガッサ星人が収められたスチール。まるでヒッチコックのサスペンス映画に登場する殺人鬼が、ヒロインの女性を手にかけようとしているかのようである。
思わず「逃げて! アンヌ隊員!」と叫びたくなるが、これはペガッサ星人が人類に牙をむきかねない存在であることを表現した1枚でもある。
このペガッサ星人は登場してからしばらくの間は姿を見せず、ダンやアンヌ隊員とも影のような姿で友好的に対話を行う。地球人のことを同じ宇宙で暮らす友人として、弱々しく臆病な姿を見せていたが、彼はとんでもない使命を帯びていた。
実は宇宙空間都市ペガッサ市の軌道上に地球が位置しており、ペガッサ星人は衝突を避けるため、地球の軌道変更を打診。しかしこれが不可能だとわかると、爆弾で地球を爆破しようとする。しかし、これはウルトラセブンに阻止され、逆に地球防衛軍によってペガッサ市のほうが破壊されてしまう。
故郷を失ったことを知ったペガッサ星人は逆上し、ウルトラセブンと戦うが、最後はどこかに去っていってしまう。ペガッサ市は人間によって破壊され、ペガッサ星人自体はいまだにどこかで生きている。そのため、いつ地球に復讐してくるかわからないという状況なのだ……。
最後にアンヌが「暗闇を見ると、あのペガッサの人が私たち人間を怖がって、そのなかに小さくなっているような気がする」というセリフを放つが、このひと言で暗闇が怖くなったチビッ子も少なくないだろう。