■あの伝説的セリフを生んだ名ドラマ『101回目のプロポーズ』

 1991年「月9」の3作品目は、浅野温子さん、武田鉄矢さん主演の『101回目のプロポーズ』だ。

 あらすじはこうだ。浅野さん演じるチェロ奏者の薫は、3年前に死んだ恋人のことが忘れられない。しかし父親の強引なお見合いで、冴えない中年男性の達郎(武田さん)と出会う。

 達郎はこれまで99回もお見合いに失敗していた。まさに美女と野獣の2人、うまくいくはずがないと思われた関係だったが……というものだ。

 トレンディドラマが一世を風靡した当時、ドラマの主役俳優といえば、人気のイケメン俳優が起用されるのが一般的だった。しかし、役柄上ではあるが、“冴えない中年男性”にぴったりの武田さんという俳優がキャスティングされたことは、当時の視聴者に大きな驚きを与えた。

 だが、平凡な男性が美女と結ばれるというラブストーリーは、多くの視聴者に希望を与えることとなる。とくにヒロインの薫のためにトラックの前に飛び出し、「僕は死にましぇん!」と叫ぶシーンは、その年の流行語大賞にも選ばれ、象徴的なシーンとして語り継がれている。

 また、音楽ユニットCHAGE and ASKAの『SAY YES』という、愛を真っ直ぐに表現した主題歌もドラマとともに大ヒットし、多くの人々の心に残る作品となった。

■当時の遠距離恋愛を取り上げた話題作『逢いたい時にあなたはいない…』

 1991年最後の「月9」で放送されたのは、中山美穂さんが主役を務めた『逢いたい時にあなたはいない…』である。

 物語は中山さん演じる東京の大学病院で働く看護師・美代子と、 札幌に転勤したサラリーマン・雄介(大鶴義丹さん)の遠距離恋愛を描いたラブストーリーだ。

 本作には、このほかにも風間トオルさん演じるプレイボーイの中西や、藤井フミヤさん演じるバツイチ子持ちの高瀬など魅力的な人物が登場する。

 多忙で遠距離恋愛中の彼氏とすれ違いの多い生活を送る美代子。そんな彼女の前に現われる魅力的な男性たち……。

 今は遠くにいてもすぐにスマホで連絡が取れる時代だが、そんなツールのない90年代は遠距離恋愛=別れる確率が高い恋愛だった。はたして2人は遠距離という弊害を乗り越え、最後まで恋人同士でいられるのだろうか……2人の行く末が気になり、夢中になって視聴した人も多いだろう。

 当時多くの恋人たちが悩んでいた遠距離恋愛という問題に、真っ向から向き合った作品だった。

 

 1991年に放送された月9ドラマの数々。今回紹介したドラマは、これまで放送されていたトレンディドラマを一新し、よりリアリティのある恋愛模様が描かれた。また当時の社会状況にもリンクした作品が多いゆえ、共感する人も多かったように思える。

 いずれの作品も、それぞれの時代背景やテーマに沿った魅力的なストーリーが展開された。その結果、1991年の「月9」は今でも語り継がれるほどの印象深い作品が続出することになったのである。

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