■設定ミスが魅力に!? 『魔界塔士Sa・Ga』の「かみ」

 最後は、『魔界塔士Sa・Ga』の「かみ」を紹介する。

『魔界塔士Sa・Ga』は、1989年スクウェア(現:スクウェア・エニックス)からゲームボーイ用ソフトとして発売された名作RPGだ。レベルアップ制の廃止や、使用回数制限のある武器など、従来のRPGの常識を覆すような独自のシステムを盛り込んでおり、当時としてはかなり尖ったゲームだった。

 ラスボスである「かみ」もかなり個性的な存在で、冒険途中で謎の“シルクハットの男”としてたびたび主人公の前に現れ、なぜかアドバイスしてくる。それもそのはず、本作の世界の大混乱は彼が退屈しのぎで興じていた“遊び”だったというのだ。

 まさにこの世界の創造主である「かみ」は、戦闘でもそれまでのボスとは異次元の強さだった。高い防御力で武器攻撃がほとんどきかず、すべての属性に耐性を持ち、魔法攻撃をしかけてもほとんど効果がない。逆に高い攻撃と多彩な状態異常でプレイヤーを苦しめ続けてくるのだ。そして、やっと追い詰めたと思ってもHP全回復……。まぎれもなく、本作最強ボスであった。

 しかし「かみ」には、設定にミスがあった。なんと“チェーンソー”を用いると一撃で倒せてしまうのだ。このことにより「かみ」は「紙」じゃないかと、当時のプレイヤーにいじられた。

 ただ、リメイク版でもこの“設定ミス”は引き継がれ、チェーンソーでの一撃死は「かみ」の公式な仕様となっている。ちなみに同社の『半熟英雄』シリーズでは「かみ」あらため「紙」となって登場し、公式にいじられていた。

「かみ」は当初の設定ミスが、それがそのままキャラの魅力となった珍しいボスである。今のゲームでは、この手の設定ミスは良くも悪くもアップデートですぐに修正できてしまう。今後、このような魅力を持つボスは登場しないかもしれない。

 

 レトロゲーム時代のしびれたラスボスの「デザイン」「キャラ設定」を紹介してきた。それぞれのボスたちは主人公の前に立ちふさがり、多くのプレイヤーたちを苦しめた。だが、その個性的な魅力で、それぞれのゲーム、さらにはそのメーカーを代表する名物ボスとなっているのも印象的だろう。

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