『春ゆきてレトロチカ』ネタバレなしレビュー! 骨太な謎解きに「不老の果実」を巡る物語…最新実写ミステリーは人生について問いかける良作だった【ヤマグチクエスト・コラム】の画像
『春ゆきてレトロチカ』

 スクウェア・エニックスによるミステリーゲーム『春ゆきてレトロチカ』が5月12日に発売となりました。

 同作はいわゆる「実写ゲーム」で、アニメーションではなく実在の俳優さんたちが演じた映像をもとに殺人事件を推理していくというもの。さっそくプレイしてみたところ非常に面白い作品でしたので、今回は私ヤマグチクエストが同作の魅力についてご紹介させていただきます。

 ただし、『春ゆきてレトロチカ』はネタバレ厳禁。国民全配信者時代ということもあり、ゲーム冒頭で生配信行為を一切禁止している旨を伝えているほどの徹底ぶりで、プレイしてみて今分かるのは、ネタバレによってどれだけこのゲームの魅力が失われてしまうのかということ。なので、本稿においてもネタバレは控えます。

 また、これは案件ではないのでハッキリ言わせていただくと、お値段はやや高いなと思いました。和風ミステリーらしい効果音やBGMに凝った作りで世界観は素晴らしいし、面白いお話だったし、価格のせいで評価が下がるというわけではありませんが、人におすすめしにくい価格帯だなと率直に思いました……!

 それでも本格的な推理小説やミステリーゲームが好きな人であれば絶対楽しめるので、そういった方の背中を押せるようなネタバレなしレビューをお送りいたします。

■プレイヤーにしっかり推理させる「後戻りさせない」ガッチリ感

 主人公は、桜庭ななみさん演じるミステリー作家・河々見はるか。

 はるかはある日、取材などで普段から親交のあった学者の四十間永司(演・平岡祐太さん)から奇妙な依頼を受けます。それは四十間家で発見された白骨死体と「不老の果実」の謎を解き明かしてほしいというもの……。

 はるかは事件の調査のために四十間家に足を運びますが、ここで四十間佳乃という四十間家の先祖が残した小説を手渡されます。

 その小説はフィクションではなく、どうやら実際に起きた出来事をまとめた手記のよう……。はるかの編集を担当している山瀬(演・松本若菜さん)から促され、現代の事件との関連を知るために小説を開くのでした。

 現実と過去の事件を重ね合わせながら、四十間家の周辺で何が起きているのかを推理していくアドベンチャーゲームなのですが、この仕組みが素晴らしい。

 今が現実なのか過去なのかは、登場人物の服装や色使いで違いを表現しているし、過去の事件を追っていく中で出てきたワードが、現実に出てくる、その逆もまた然り、そういったときでも混乱しないようにムービー中に1ボタンで重要ワードを確認できるというオプションがついているのも親切。登場人物も同様にチェックできるので、状況を整理しながら話をきくことができます。

 流れとしては、事件が起きる→状況整理→推理という形で話が進むのですが、この状況整理のパートがこのゲームの真髄。

 画面左側に推理の道があり、画面右側には今回の事件をシーンごとに区切り、その各シーンでの重要事項がアイコンのようにおいてあります。このアイコンを左側の謎に組み合わせることで「仮説」を立てていきます。この「仮説」が面白い。

 たとえば、普通の推理ゲームであればこの時点で推理が始まっているでしょう。ゲームによっては、こういった組み合わせで答えを導いて、画面の中のキャラクターが勝手に推理していってしまう、という「これ俺が推理したか……?」というモヤモヤを感じた経験もあることでしょう。

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