■「言葉を信じるな、言葉の持つ意味を信じるんだ」(プラント編)
暴走した超巨大兵器“アーセナルギア”が突っこんだ先、ニューヨークにあるフェデラル・ホールの屋根で、雷電はソリダス・スネークとの一騎打ちに臨む。激闘の末、ソリダスを倒した雷電は、人々が行き交う通りでソリッド・スネークとの合流を果たす。上官であるはずのキャンベル大佐がAIだったこと、自分は愛国者達の駒として操られていたことなど、明らかになった事実に動揺する雷電に、スネークは上記の言葉を送った。
プラント編が始まって以来、雷電はキャンベル大佐やローズ、スネークを始めとする周囲の人間に頼り続けていたこともあり、自分でものごとをあまり考えようとはしなかった。彼に自立を促す言葉としてはうってつけだろう。その一方でこのセリフは現実を生きているプレイヤーに向けた、助言的な意味合いにも受け取れる。
スネークの言葉の真意は、「行間を読み取って、それを信じろ」ということだと思われる。「ありがとう」という言葉そのものではなく、「ありがとう」と言われた理由や意味を探る……そんなところだろう。思いを伝えるための手段として言葉があるのだから、言葉の持つ意味をたぐっていけば、やがて相手の真意につながるというワケだ。真意を確実に伝えるなら、言葉は自然と分かりやすく、やさしい表現になるだろう。
言葉自体に依存すると、主張しようと強くなる語意に思考が引っ張られ、最初に書きたかったことからどんどんかけ離れてしまう。それが当たり前になれば行間を読む習慣は失われ、人々はうわべだけの言葉に執着しかねない。
スネークのこのセリフは現代社会にも当てはまりそうだ。インターネット上でよく見かける過激な言葉、奇をてらった表現などは、本来その言葉が持つ意味を社会が信じていないことの表れなのだろうか。
シリーズの中でも難解な作風として有名だった『MGS2』だが、20年たった今振り返ってみると理解できる部分が多く、むしろ王道的にすら感じる。『MGS2』は現在、HDコレクションとして、『メタルギアソリッド3 スネークイーター』とセットでPS Vitaとプレイステーション3で発売されている。PS Vitaの生産はすでに終了し、プレイステーション4や5が出てきた今は環境的に厳しいが、未プレイの人にはぜひ遊んでみてほしい傑作だ。