■「世界は『真実』で飽和する」(プラント編)

 物語の最終盤。サンズ・オブ・リバティの首領であり、伝説の傭兵ネイキッド・スネークの遺伝子を受け継いだ3人目の蛇、ソリダス・スネークとの決戦を前に、雷電は愛国者達と無線で話をする。愛国者達はデジタル化が世界にもたらす変化や危険性などを説く中で、この言葉を発した。

 このセリフは、それまで続いてきた会話の締めくくりのようなもの。「世界のデジタル化は、人の弱さを助長し、それぞれだけに都合の良い『真実』の生成を加速している」、「衝突を怖れてそれぞれのコミュニティにひきこもり、ぬるま湯の中で適当に甘やかしあいながら、好みの『真実』を垂れ流す」といったセリフが事前に出てくる。

 デマの蔓延、閉塞した界隈の中で先鋭化していく主義や思想など、デジタル化された現代社会が抱える問題をそのままなぞらえたかのような指摘だが、これらは今から20年も前の作品のセリフだ。“真実”をめぐって罵り合っている現状を鑑みると、「衝突を怖れて~」という部分は少し違うかもしれないが、「好みの真実」があふれているという点は的を射ている。

 続く会話では、世界に氾濫する“真実”を選別し、進化を促すことで人類を導くのが愛国者達の目的であると判明。物語中で明かされるが、少なくとも『MGS2』の時点で、愛国者達のメンバーは人ではなく、複数の人工知能(AI)によって構成されている。影の支配者としてアメリカに君臨するだけでなく、“タンカー編”や“プラント編”の物語は、すべて彼らの筋書き通りに進んでいた。言語統制として使われた“らりるれろ”は、彼らの力のほんの一端に過ぎない。

 劇中でほのめかされてきた“らりるれろ”がいかに強大な存在であるか、この一連のシーンで、プレイヤーたちは思い知らされることとなった。

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