■貧弱すぎる主人公がもたらす緊張感
神秘的なオープニングBGMにのってタイトル画面が表示。スタートボタンを押すと、一転して軽快なBGMが流れ、洞窟探検がスタートします。ゴンドラに乗り「いざ冒険に出発」という開始シーンで、ゴンドラと足場の隙間に落ちて死んでしまった人は全国にどのくらいいたのでしょうか。
実はこのゲーム、キャラクターの半分ほどの隙間があれば余裕で落下死します。しかも主人公キャラの身長は16ドットで描かれているのですが、14ドットを越える高さから落下すると即死。つまり彼にとっては、身長以下の高さの段差ですら命取りということです。
工事現場などで「1メートルは一命取る」という注意喚起の標語を見かけますが、『スペランカー』ではその言葉を身をもって体験できてしまいます。
主人公の虚弱体質ぶりは、それだけではありません。明らかにザコっぽい幽霊のような敵の残りカスや、コウモリのフンがかすめるだけでも即死。下り坂でジャンプをすると、ほんの少しの高低差で即死。どうということのない小さな段差や、ささいなミスが即命取りになる理不尽さ……そのあたりがクソゲーと呼ばれてしまう要因なのかもしれません。
しかし逆に考えると、これだけ“デリケートな主人公”だからこそ、油断することなく緊張感をもってプレイに臨めます。他のゲームだったら当たり前のハシゴやツタを渡るときのアクションも細心の注意を払って操作し、つねにプレッシャーを感じながらジャンプするのが『スペランカー』の醍醐味だと個人的には思うのです。