■濃厚すぎるシナリオ、かつマルチエンディングという驚異の内容量

「僕にその手を汚せというのか」

 まずは第1章「僕にその手を汚せというのか」のあらすじをご説明いたします。物語の舞台はヴァレリアという架空の島国。偉大すぎて「覇王」とも呼ばれたドルガルア王の死後、後継者がいなかったこともあり、ウォルスタ人、ガルガスタン人、バクラム人という3つの民族による内乱が起きていました。

 主人公・デニムを含む、少数民族のウォルスタ人は民族浄化の対象となっており、ゲームスタート時にもデニムが暮らす港町ゴリアテは暗黒騎士団による襲撃を受ける描写があります。

 そんなある日、ゴリアテに暗黒騎士団の団長「ランスロット」が来ると聞きつけたデニムと姉・カチュア、親友・ヴァイスの3人は、ランスロットを待ち伏せて暗殺しようとします。しかし、そこに現れたのは「ランスロット」という同名の別人で、東の王国・ゼノビアから傭兵の仕事を求めてやってきた騎士でした。

 かたき討ちが失敗に終わり混乱する3人でしたが、ウォルスタの指導者であり現在はガルガスタンに捕らえられているロンウェー公爵を救出するため、ランスロット率いるゼノビアの騎士たちに力を借りることになります。その後、彼らの協力もあり、デニムたちは見事にロンウェー公爵の救出に成功。ロンウェー公爵に功績を称えられ英雄となったデニムたちは、以降騎士団として戦うこととなります。ウォルスタ人の解放を目指すロンウェー公爵はデニムたちに、レオニール騎士団長を救出したあと、ガルガスタンとの戦いに向け、バクラムと手を組む暗黒騎士団に「非干渉条約」を結ぶよう命じます。

 この命を受け、憎き暗黒騎士団のもとに行き、仇のランスロットから直々に謝罪を受けるなどありつつ、任務を達成したデニムたちに命じられた次なる任務は、ガルガスタン領地内にある町の強制収容所にいる大勢のウォルスタ人を武装蜂起させることでした。

 任を受け、収容所に向かうデニムたち。しかし、収容されている人々は「戦って何になるのか」などと現状維持を求めて一斉蜂起を拒否します。このシーンは『タクティクスオウガ』における序盤の大きなターニングポイントで、「このままでいいのか!?」と躍起になるヴァイスと、収容されている人々の「解放なんかされなくても生活には困らん」という言葉、そのどちらの気持ちも理解できるうえに、正解がない押し問答なだけにプレイヤーはかなり頭を悩ませたことでしょう。はたして何が正義なのか。

 そして、その後到着した後続隊のレオナールからデニムはある命を受けます。それは、「町の住人を1人残らず殺せ」というものでした。

 これは武装蜂起を拒否されることを予測していたロンウェー公爵の命令で、ガルガスタンを装って収容されている人々を殺すことで、ガルガスタンにその虐殺の罪をなすりつけ、ウォルスタ人が同胞のために結束し戦わざるをえなくなる、ということが狙いであるとレオナールから説明を受けます。

 ここで第1章のタイトル「僕にその手を汚せというのか」が効いてくるわけですね。はたしてデニムはどんな選択をし、どんな未来をつかむのでしょうか。

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