■プレイヤーが「魔法を作れる」画期的RPG!
ドラクエ6の影に隠れたのが『テイルズ オブ ファンタジア』だとしたら、マリオやプレイステーションの大作の影に隠れてしまったのが『ルドラの秘宝』(スクウェア)だ。同作が発売されたのは1996年4月5日で、その約1か月前にミリオンヒットとなった『スーパーマリオRPG』(任天堂・1996年3月9日発売)が登場。さらにルドラの発売直前には『バイオハザード』や『鉄拳2』といったプレステを代表する大ヒット作が続々発売されていた。
そんな状況もあってか、当時『ルドラの秘宝』は正直スクウェア発の新作RPGとは思えないほど話題にならず、個人的にはそっちに驚いた覚えがある。だがゲームとしては悪くないどころか、発売時期さえもっと早ければ「人気シリーズになっていたかも……」と思わずにはいられないくらいRPGとしての完成度は高かった。
複数の主人公たちが微妙に絡み合う秀逸なストーリー構成やメロディアスでカッコいいBGM、スピーディでテンポの良いバトルなど、「さすがスクウェア!」と感じさせられるケチのつけようのないゲーム内容。そして、何と言ってもルドラの最大の特長は「言霊システム」と呼ばれる斬新な要素にある。
これはプレイヤーが6文字以内の好きな文字を入力することで、魔法(作中では“ことだま”と呼ぶ)が生まれるというシステム。運が良ければいきなり強力な魔法が誕生したり、法則性を見つけ出せば魔法のバリエーションが増やせるなど、ランダム性とやりこみがいのある画期的な新要素に夢中に……。それに「ホイミ」や「ケアル」のような、ほかのゲームの有名な魔法名を入力すると、ちゃんと回復魔法になるといった遊び心もあってプレイヤー心をくすぐった。
今ならネット上に最強の魔法があっさり広まりそうだが、当時のプレイヤーはすべて手探りで、自分もどっぷりハマってしまった。個人的には、同作こそがスーファミ後期に生まれた「ベストRPG」かもしれない。