■『ゴルフ』の中に広がっていた「現実」同様の風景
そこまで意図はしていなかったのでしょうが、『ゴルフ』には現実世界の風景と同じ要素が広がっていました。これは当時小学生の僕が初めて見た、コンピュータ内に展開された「大自然」だったんですよね(ゴルフ場が大自然なのかはさておき)。
しかも、単に背景画として描かれているワケではなくて、ショットを打つ方向を十字キーの左右で変更していくと、一緒に風景もスクロールして動いていくんです。
自分を中心にして、木々や見えている池の端が動いて視界が流れる様を見れば、そこには世界としてのリアリティがあり、「俺は今、自然の中にいるんだ!」的な気分になったものです。当時はホントに。
今の子どもが見たら「パパ、このギザギザの画面ナニ?」って言うかもしれないけれども……。まぁそのあたりは、昭和の子どもの補完能力をなめんなということで。
さらにこの『ゴルフ』、音の扱い方が素晴らしい! なんとBGMナシ! プレイ中はほぼ無音。ボールを打ったときの「ぶにぃいぃいぃ~ん」という飛球音や、カップインした際の「ピョロ!」っていう効果音程度。この静けさこそが、逆に現実感を誘うのですよ。だって、現実の世界にはBGMなんて流れてないでしょ?