時は1984年……ファミコン発売の翌年の5月1日、任天堂からスポーツゲーム『ゴルフ』が発売されました。“スーマリ”(『スーパーマリオブラザーズ』1985年発売)をファミコンブームのひとつの契機としてとらえるならば、まだまだブーム以前の時代だったといえましょう。
……とはいえ最初から“ドンコ”こと『ドンキーコング』(1983年発売)が存在していたわけですから、当時子どもだった僕にとってのファミコンブームは「リリース直後から」と言っても過言ではありません。
任天堂『ゴルフ』の内容そのものは至ってシンプルなゴルフゲームで、全18ホールを回るだけ。Aボタンを押すとクラブを振りかぶりはじめ、もう一度Aボタンを押すとトップの位置を決定。そして三度めのAボタンでショット……という操作体系なのですが、実はそんなことはどうでもよくて、このゲームの魅力はね、その世界観なんですよ。
世界観? こんなシンプルなゴルフゲームに? ワケわからないでしょ? 画面はドット絵の簡素な風景だし。
けれど、そのドット絵には木々があり、池があり、そして青空があるわけです。それまでのゲームって、アーケードゲームを含めても、たとえばレース場(ラリーX)だったり、平安京であったり(平安京エイリアン)、でっかいコングがタルを落としてきたり(ドンキーコング)、なにかしら現実とはかけ離れた世界が描かれていて、言ってみればゲーム用の“ステージ”が用意されていただけでした。