ファミコンの育成系ゲームといえば、『ベスト競馬 ダービースタリオン』(アスキー)が有名です。のちのゲームに大きな影響を与えたこの作品は、競馬ゲームの草分け的な存在でもあります。
そんな『ダビスタ』が世に出る、4年前。ファミコンの「育成ゲームの祖」ともいえるタイトルがあったのをご存じでしょうか。そのソフトとは、1987年4月24日にリリースされた『ファミリージョッキー』(ナムコ)。くしくも『ダビスタ』と同じく、競馬をモチーフとした作品でした。
私が『ファミリージョッキー』を初めて遊んだのは10代後半。年の離れた兄が大の競馬好きで、彼に借りたのがきっかけでした。でも借りたのはいいものの、箱も説明書もなく、情報はカートリッジ裏側の紹介文のみ。ネットで攻略情報がすぐ調べられる時代ではありませんから、頼りは、経験者である兄のアドバイスだけでした。
兄は相当やりこんでいたらしく、いろいろとゲームのツボを教えてくれました。中でも、一番印象に残っているのはこの言葉。
「6レース目でナムコカップに出られないとダメ」
なにがどうダメなのか、さっぱり意味が分からない。
『ファミリージョッキー』は、プレイヤーが騎手となり、ムチを入れたり、ジャンプして障害物をかわしたりしながら、レースを勝ち進んでいくアクションゲームです。当時の私は、競馬の「ケ」も知らない高校生で、1位になって次のレースに進むこと以外に喜びや達成感はありませんでした。
しかし遊んでいるうちに、兄が口にした言葉の意味が分かるようになり、『ファミリージョッキー』の奥深さに魅了されることになります。