■最大の裏切り者が見せた純愛…市丸ギン「100年越しの復讐」

 最後に紹介したいのが、それまでのキャラクターの印象を根底から覆した伏線回収、市丸ギンの真意である。長年“裏切り者”として描かれてきた彼は、実は幼なじみ・松本乱菊のため、100年間もの間、藍染惣右介を討つ機会をうかがい続けていた。

 護廷十三隊三番隊隊長だったギンは、京都弁に細い目、不気味な笑みが特徴的な底知れない男として登場。「尸魂界篇」では終始不穏な存在感を放ち、藍染とともに尸魂界を裏切ったことで、多くの読者に“完全な裏切り者”という印象を植えつけることになる。

 しかし久保氏は、そんなギンにも後の真相につながる意味深な伏線を仕込んでいた。

 コミックス第17巻、「尸魂界篇」でのこと。処刑を目前に控え、すでに自らの運命を受け入れていた朽木ルキアに対し、ギンは「助けたろか?」と一瞬だけ希望を与えた直後、「嘘」と突き放している。

 当時はギンの悪趣味な性格を印象づける場面に見えたが、真相を知った後ではその見え方は大きく変わる。ルキアがあのまま死を受け入れれば、藍染の目的である彼女の体内に眠る崩玉の摘出が容易になってしまう。ギンには正体を隠しながらも、ルキアに生きる執着を持たせるため、あえて揺さぶりをかけたのだろう。

 また、コミックス第46巻で卍解「神殺鎗(かみしにのやり)」を披露した際、ギンは一護に対して、刀身が「13km」伸びると語っている。

 もっともこの説明は後にハッタリだったと判明するが、あえて“13”という数字が使われた点も意味深だ。キリスト教において13が裏切り者ユダを象徴する数字であることは有名であり、ファンの間では、いずれ藍染を裏切るというギンの意志が込められていたと考察する声も少なくない。

 こうして振り返ってみると、ギンというキャラクターそのものが極めて緻密に設計されていたことに気づかされ、久保氏の巧みな構成力にあらためて驚かされる。

 そして、コミックス第48巻、「破面篇」のクライマックスでついに伏線が回収される。100年間、藍染の側近を演じ続けた末、ギンはついに反旗を翻し「神殺鎗」で復讐を決行したのだ。しかし、その悲願は届かず、力尽きることとなる。

 それでも最期に明かされたのは、“裏切り者”だと思われていた男の100年すべてが、乱菊ただひとりのために捧げられていたという事実だった。この切なすぎる真相は、『BLEACH』屈指の鮮烈な伏線回収として、今もなお多くの読者の記憶に刻まれている。

 

 久保帯人氏が描く伏線回収の凄さは、単なる設定の種明かしでは終わらないところにある。

 そこには必ずキャラクターの生き方や関係性を根底から覆す、重厚なドラマが存在する。だからこそ、何年もの時を経て真実が明かされた時、読者は強烈な衝撃を受けるのだろう。

 いよいよ7月からアニメ『BLEACH 千年血戦篇』の最終シーズンが始まる。長きにわたる『BLEACH』という物語も、ついに本当のラストを迎えることになる。

 久保氏がこれまで仕掛けてきた数々の伏線がアニメでどのように描かれ、そして物語がどのような結末を迎えるのか、その歴史的な瞬間を絶対に見届けたい。

 

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