物語のラストに隠された意外な素顔…『シティーハンター』における最重要人物「海原神」とは何者だったのかの画像
[Blu-ray] 劇場版『シティーハンター 天使の涙』(エンジェルダスト)(通常版)(c)北条司/コアミックス・「2023 劇場版シティーハンター」製作委員会

 『週刊少年ジャンプ』(集英社)の黄金期を支えた、北条司氏の名作『シティーハンター』。連載終了から35年近くが経過した今もなお、その人気は衰えることを知らない。主人公・冴羽獠の、強く優しく、そしてちょっとスケベな生きざまに魅了された読者も多いだろう。

 本作には、獠の命を狙うさまざまな強者たちが登場する。その中でも最強の敵キャラクターとして名高いのが、獠の育ての親でもある海原神(かいばら・しん)だ。

 そもそも、この海原とはどのような人物だったのだろうか。今回は、獠との複雑な関係性とあわせて振り返ってみたい。

 

※本記事には作品の核心部分の内容を含みます。

 

■事実上のラスボス! 巨大組織「ユニオン・テオーペ」の冷酷非道な首領

 海原は、中南米を拠点とする麻薬組織「ユニオン・テオーペ」の首領であり、組織内では「長老(メイヨール)」と呼ばれる権力者だ。この組織は麻薬密売だけでなく、国家とも手を組むほどの巨大なシンジケートであり、人体を強化する麻薬「エンジェル・ダスト」を用いて人間兵器を量産しようと企む極めて危険な犯罪組織であった。

 物語序盤からこのエンジェル・ダストが登場しており、当時、獠のパートナーであった槇村秀幸も、この薬を投与された刺客に襲われて命を奪われている。

 その後、海原は獠がアメリカ滞在時にコンビを組んでいた凄腕のスイーパー、ミック・エンジェルをけしかけ、獠の暗殺を命じる。だが、ミックは獠の新パートナーである槇村の妹・香を本気で愛してしまい、任務を放棄した。

 そこで海原はミックが帰国する際、彼が搭乗した飛行機を爆破するという暴挙に出る。しかも、ミックが瀕死の状態で生きていると分かると、なんと彼に新型のエンジェル・ダストを投与。超人的な体力と回復力を持つ兵士として復活させ、自分の手駒としたのである。

 また、海原はかつての戦友の娘・マリィーが単身で彼の所有する船に乗り込んできた際にも、海へ逃げる彼女めがけて手りゅう弾を3個も投げつけるという非情さを見せる。その際に浮かべた不敵な笑みは冷徹そのもの。彼の恐ろしさを象徴するシーンとして、読者に強烈な印象を与えた。

 こういったエピソードからも、海原が目的達成のためには手段を選ばない、冷酷非道な男であることがうかがえる。

■獠の銃撃を避ける高い戦闘能力と巧みな話術で人を惑わす人心掌握術

 海原の正確な年齢は明かされていないが、少年時代の獠を育てていたことから、おそらく50代〜60代くらいではないかと推測される。それにもかかわらず、左足が義足であることを感じさせないほど戦闘能力は高く、作中では獠の正確な銃撃を避け、正気を取り戻したミックの攻撃すらとっさにかわすほどの高い身体能力を誇る。

 かつてエンジェル・ダストを投与されたことに気づき、海原の裏切りを知った獠が、憎しみに駆られて彼を襲撃したことがあった。その時も海原は彼を返り討ちにしており、両者の実力差は明らかであった。

 獠との最後の決戦において、海原は些細なアクシデントが原因で敗北することとなる。偶然ミックが落としたペンダントが海原の靴の先端に絡まったことでバランスを崩し、獠への銃撃が外れてしまい、自身の胸に銃弾を受けた。もしあのアクシデントがなければ、勝敗は逆転していた可能性も十分にあっただろう。

 また、海原は戦闘能力だけでなく、人心掌握術にも長けていた。香と初めて会った際には、終始穏やかな笑顔を作りながら、巧みな話術で彼女の心の内を探ろうとした。その姿は一見すると、人当たりのいい初老のイケメン紳士である。

 さらに、海原は煽り方も抜群に上手い。エンジェル・ダストで理性を失い、変わり果てたミックと対峙してショックを受ける獠に対し、「感謝したまえ獠っ!! わたしのおかげで生きた親友と再会できたんだよ!!」と言い放ち、心を揺さぶった。見ているこちらまでもが、神経を逆なでされてしまうほどの無慈悲な発言である。

 表情からは本心を読み取れず、それでいて人の心を自在に操る海原。その底知れない様子は、まさに巨大組織の首領たるゆえんだろう。

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