モンキー・パンチさんが1967年に「WEEKLY漫画アクション」(双葉社)で連載を開始したハードボイルドアクションの金字塔『ルパン三世』。テレビアニメの第1シリーズは1971年10月から放送が開始され、今年2026年でアニメ放送55周年を迎えます。
そのアニメ『ルパン三世』の楽曲も多数手がけられた偉大な作曲家の大野雄二さんが5月4日に亡くなられたという悲しい報もあり、大野さんの数々の名曲とともに、あらためて『ルパン三世』を思い出した人も多いのではないでしょうか。
昭和に放映されたテレビアニメシリーズは、ルパンの着ているジャケットのカラーでも判別できました。『ルパン三世 PART1』(1971年)は緑、『PART2』(1977年)は赤、そして『PART3』(1984年)はピンクとなっています。中でも全155話におよぶ「赤ジャケット」ルパンの人気と認知度は凄まじいものがありました。
2017年に日本テレビが実施した、PART1~PART3の中で一番見たいタイトルを投票する企画「ルパン三世ベストセレクション」では、1位・2位を『PART2』のエピソードが独占。1位が「さらば愛しきルパンよ」、2位が「死の翼アルバトロス」で、どちらもスタジオジブリ作品でおなじみの宮崎駿さんが、「照樹務」の名義で脚本・演出・絵コンテを担当した回でした。
そこで今回は、昭和の『ルパン三世』の人気ぶりをリアルタイムで体感した筆者が、宮崎駿さんが手がけた代表的なエピソードについて振り返ってみたいと思います。
※本記事には各作品の核心的な内容を含みます。
■囚われの姫君を救う王道の冒険活劇『ルパン三世 カリオストロの城』
1979年公開の劇場版第2弾『ルパン三世 カリオストロの城』は宮崎駿さんの劇場映画初監督作品であり、前作『ルパンVS複製人間』(1978年)のSF怪奇路線とは一線を画す、爽快感あふれる冒険活劇として描かれました。
公開当時テレビシリーズでは「赤ジャケット」の『新ルパン』が人気絶頂。しかし宮崎監督は、あえて『旧ルパン』の「緑ジャケット」をルパンに着せたあたりからもこだわりが感じられます。
そんな本作は「アニメーションの教科書」と称されるほど、素晴らしいアクションシーンの宝庫。その完成度の高さは、いまだに語り継がれているほどです。それも手描きのセル画の時代にもかかわらず、総製作期間は「たった半年」という奇跡……。それを映画初監督作品で成し遂げた点も信じられません。
象徴的だったのは、やはり序盤のカーチェイスのシーンではないでしょうか。ルパンの愛車「フィアット500」が垂直に近い崖を駆け上がる、アニメならではの豪快なアクションが炸裂。現実には不可能な挙動だとしても、摩耗するタイヤやエンジンのリアルな振動描写が映像に説得力を与えました。
宮崎監督の演出は、物理的に正しいかどうかよりも、少々強引なアクションだとしてもリアルな描写と綿密な演技によって、観客を楽しませることを優先しているように思えました。
高い塔に閉じ込められたクラリスを救うためにほぼ垂直の屋根を駆け、ルパンが塔をジャンプしていくシーンや、ラストの時計塔から落下するクラリスを空中を泳いで抱き寄せるシーンなどはあまりにも有名ですね。
クライマックスでの時計塔の内部をルパンとクラリスが逃げる場面は、コミカルな動きとシリアスな描写が融合した秀逸な演出が光ります。時計塔を動かす巨大な歯車の上に乗って移動する情景にハラハラさせられ、追っ手の兵士が歯車に潰される場面にはゾッとしました。
そして時計塔が崩壊し、湖底からローマ時代の遺跡が現れる荘厳なシーンも圧巻。それまでの血なまぐさい痕跡を湖の清らかな水が洗い流し、カリオストロ城本来の美しい景色が広がるのです。
ようやくインターポールが動き出してルパンとの別れの時が近づくと、「私も連れてって」というクラリス。「泥棒はまだできないけど、きっと覚えます」という健気なセリフにグッときた人も多いはず。クラリスの幸せを願いながら静かに葛藤するルパンの動作は、彼らしさを見事に表現していました。
さらにルパン一味が去った直後に現れた銭形の「いや、ヤツはとんでもない物を盗んでいきました。あなたの心です」というセリフは、何度も聞きたくなるアニメ史に残る名ゼリフでしょう。


