■町田啓太演じるキーパーソンに夢中

 そして町田啓太の壬生憲剛。地元の半グレ連中のリーダー、自動車整備会社社長の表の顔を持ちながら、裏でグレーなビジネスを回し、伏見組の汚れ仕事も引き受ける男。動物を愛し、背中に愛犬・おもちのタトゥーを入れる繊細さと、無慈悲な計算高さを併せ持つ。

 町田啓太の演技は、知的な狂気がエグい。冷静沈着で頭脳明晰、交渉上手。厄介な案件を次々と九条に持ち込む姿は、ただの悪党じゃない。リーダーとしての統率力、配下への礼節、しかし底に潜む冷徹さ。町田はそれを、声のトーンと視線の鋭さ、微かな笑みの温度差で表現する。

 背中のタトゥーや整備工場での佇まい一つで、壬生の多面性が伝わってくる。あの「もっと大きな影響力を持つために仲間になってくれ」というリクルートシーンとか、相手のプライドを尊重しながら連帯を促す知的な狂気。

 町田啓太は、クセの強い役を「人間らしく」落とし込むのが上手い。半グレのリーダーなのに、どこか哀愁や博識さがにじむ。あの狂気と優しさのブレンドが、ドラマの群像を豊かにする。見てるこっちが「この男、ただ者じゃない」と警戒しつつ、妙に引き込まれる。町田の壬生は、社会の闇を体現しながらも、決して一面的じゃない深さを与えてくれる。

 この4人の演技が絡み合うことで、『九条の大罪』はただのクライムドラマじゃなくなる。柳楽の九条が法の境界を問い、松村の烏丸がその揺らぎを人間臭く映し、黒崎の曽我部が不遇の痛みを生々しく突きつけ、町田の壬生が闇の現実を体現する。群像劇の中で、それぞれが「余白」を活かした演技で語る。

 派手なリアクションは少ないが、彼らの演技は綺麗事だけじゃ救えない現実の中で、もがく人間のリアルを描き出す。四人を見てたら、俺も九条の大罪にどっぷりハマっちゃうよ、と。そういうことか。俺も九条法律事務所で働かせてください。

 

■著者プロフィール
かんそう
ブロガー・ライター・作家。北海道の片隅で意味不明な文章を綴る長男。
著書に『書けないんじゃない、考えてないだけ。』『推すな、横に並んで歩け』がある。

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