近年、『アイドルマスター』『ラブライブ!』『【推しの子】』など、“アイドル(歌手)”を題材としたヒットアニメは数知れません。そのルーツがどのあたりなのか探ってみると、やはり1980年代のアニメが浮かび上がります。
1980年代には、雑誌『アニメージュ』(徳間書店)の表紙を飾り、『月刊OUT』(みのり書房)でパロディの標的となり、ファンの人気ランキングの常連だった“2人のアイドル”の姿がありました。
その1人は、戦火の宇宙を歌声で包み込んだ『超時空要塞マクロス』(1982年)のリン・ミンメイ。そして、もう1人は魔法の力で憧れの女性の姿へと変身した『魔法の天使クリィミーマミ』(1983年)のクリィミーマミです。
当時のファンにとって、彼女たちは単なる「アニメキャラ」という存在にとどまりませんでした。多彩な主題歌や劇中歌、そして彼女たちのライブシーンの振り付けを必死に覚えた記憶がよみがえる人もいることでしょう。
当時、夢中になった少年少女にとって、彼女たちはブラウン管の向こう側に確かに存在した「アイドル」そのものだったのです。
1980年代前半のほぼ同時期、彗星のごとく現れた2人の“歌姫”たち。彼女たちの活躍をリアルタイムで追いかけた筆者が、現代の視点から比較してみたいと思います。
■「ロボット」と「魔法少女」…対照的なジャンルで生まれた「革新的な歌姫」
「アイドルもの」のアニメは、今では1つのジャンルとして定着しましたが、その元祖をたどると1971年に放送されたアニメ『さすらいの太陽』まで遡ります。
原作・原案は『宇宙皇子』などで知られる藤川桂介さん、作画はすずき真弓さんが手がけた漫画が原作で、『少女コミック』(小学館)で連載された本作は、当時の少女たちから絶大な支持を集めた芸能界を舞台にした物語でした。
1970年代のアニメ界を振り返ると『巨人の星』をはじめとしたスポ根ブームの真っ只中。前述の『さすらいの太陽』や、実在のスターをモデルにした『ピンク・レディー物語 栄光の天使たち』(1978年)などは芸能界やアイドルがモチーフになっているものの、昭和特有の「努力と根性」の物語として描かれていました。
その流れが劇的に変化したのが、1980年代前半です。現代のアイドルアニメのプロトタイプ(原型)ともいえる要素を含んだ革新的な作品が、男性向けの「ロボットもの」と、女性向けの「魔法少女」という真逆のジャンルから生まれたのです。
1982年放送の『超時空要塞マクロス』のリン・ミンメイは、星間戦争という極限状態の中でアイドルとして花開きます。ミンメイの歌は単なる主題歌や劇中歌の枠を飛び越え、物語の根幹を担う重要な存在に位置づけられました。
1983年放送の『魔法の天使クリィミーマミ』のマミは、普通の10歳の少女が魔法の力で一時的に変身するというシチュエーションによってドラマを生みます。夜遅い仕事は受けられず、身元も明かせないことから昭和のアイドルらしい神秘性も演出されました。
そんな昭和アニメの2大アイドルは、まったく異なるジャンルながら“共通点”がありました。それが劇中の歌姫(アイドル)と新人歌手を完全にリンクさせた「メディアミックス」の先駆的な試みです。
15歳のミンメイを演じたのは、「元祖アイドル声優」ともいわれた当時19歳の新人・飯島真理さん。テレビ版のクライマックスを彩った挿入歌『愛は流れる』や、劇場版の主題歌として大ヒットを記録した『愛・おぼえていますか』など、ファンならずとも聞き覚えのある曲を世に送り出しました。
一方、マミ(森沢優)を演じたのは、15歳でデビューしたばかりの太田貴子さん。主題歌『デリケートに好きして』や、B'z結成前の松本孝弘さんがギターで参加したことでも知られる後期エンディング『LOVEさりげなく』など、こちらも印象的な楽曲が多数あります。
くしくもこの両アイドルは、「アニメキャラクターと実在のアイドルを重ね合わせてプロデュースする」という、昨今のアイドル作品でも見られる手法が取り入れられていたのです。


