■ホラーよりも怖い?『きみが心に棲みついた』

 最後は、2018年にTBS系の同枠で放送された『きみが心に棲みついた』を振り返りたい。本作は、2011年から2019年にかけて『kiss PLUS』および『フィールヤング』で連載されていた天堂きりんさんの同名漫画を実写化した作品だ。脚本は吉澤さんと徳尾浩司さんが手掛けており、吉澤さんは1、2、7話と最終回を担当している。

 恋愛ドラマながら「胸が痛くなる」「ホラーより怖い」といった声が上がった本作で、主人公の小川今日子を演じたのは吉岡里帆さん。自己肯定感の低さからどこか挙動不審な彼女は、合コンで吉崎幸次郎と出会い、少しずつ前を向こうとする。だがその矢先に学生時代に深く傷つけられた相手・星名漣と再会し、彼の歪んだ支配と執着に再び飲まれていく。

 一見、好青年だが実は冷酷な星名役は向井理さん、今日子を守る吉崎役は桐谷健太さん。対照的な二人の存在は、物語にスリリングな緊張感をもたらした。

 ドラマは設定や登場人物に違いは多少あるものの、ストーリーは原作におおむね沿ったもの。原作では今日子や星名のトラウマの掘り下げも多かったが、ドラマはコンパクトにまとめられており、あまりに重すぎる設定はややソフトなものに改変されていた。

 その分、ドラマ版では星名への依存から抜け出そうともがく今日子の葛藤や苦しみ、そんな彼女を支える吉崎の心情、星名の歪みなどが丁寧に描かれている。一人ひとりの痛みが見えてくることで、今日子が共依存から脱却するまでのプロセスも無理なく伝わってくるのだ。こうした心の揺れの描き方の巧みさも、本作の見どころといえるだろう。

 加えて物語の随所で、スズキ次郎役のムロツヨシさんや飯田彩香役の石橋杏奈さんら脇を固める人物たちにも焦点が当てられることで、作品全体に広がりが生まれていた。

 

 吉澤さんの脚本の魅力は、恋愛という枠にとどまらず、人の感情の複雑さまでも繊細に描き出す点にある。明治時代を舞台にした『風、薫る』において、その視点がどのように活かされるのか注目したい。

■深キョン主演の吉澤智子作品をチェック

ダメな私に恋してください
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