『風、薫る』脚本・吉澤智子が手掛けた漫画原作「エモい実写化ドラマ」3選 泥沼不倫モノから深キョン代表作までの画像
『風、薫る』(C)NHK

 2026年3月30日から、NHK連続テレビ小説『風、薫る』が放送中だ。脚本を務めるのは、これまでコメディからNHK大河ドラマ『八重の桜』まで幅広いジャンルの作品を手がけた吉澤智子さんだ。

 文明開化の波が押し寄せる明治を舞台に、看護という世界に飛び込んだ二人の女性の生き様を描く本作。吉澤さんといえば、これまでにも幾多の作品で女性の本音や恋心の機微をリアルに描いてきた。少女漫画原作の実写作品にも多く関わっており、恋愛模様を始め、繊細な人物描写も印象的だ。

 そこで今回は、吉澤さんが脚本を手掛けた女性向け漫画原作ドラマを振り返ってみたい。

■深田恭子さんの可愛さが爆発した『ダメな私に恋してください』

 まずは、『マーガレットコミックス』にて2013年に連載されていた中原アヤさんの同名漫画をドラマ化した『ダメな私に恋してください』(TBS系)。

 実写版で主人公・柴田ミチコを演じたのは深田恭子さんだ。当時の深田さんは、持ち前の可愛らしさに大人の色気も加わり、以前にも増してその魅力に注目が集まっていた。『ダメ恋』では、恋に不器用でポンコツだけどどこか憎めないミチコというキャラクターをチャーミングに演じ、さらなる話題を集めることとなる。

 相手役には、ドSな元上司・黒沢歩役のディーン・フジオカさんと、爽やかな年下イケメン・最上大地役の三浦翔平さんが名を連ねる。3人の、時にコミカルで時にキュンキュンするやり取りは視聴者の視線を釘付けにし、完結後には「ダメ恋ロス」なる言葉が生まれるほど人気を博した。

 その魅力を語るうえで欠かせないのが、物語を支える脚本の存在だ。軽妙な掛け合いの中に、リアルな人間模様や登場人物の繊細な心情がふと織り込まれ、視聴者が自然とキャラクターに引き込まれていく。そこに、深田さんの持つほんわか感や絶妙な間の取り方が加わることで、ミチコの人間性がより輝いて見えてくるのだ。

 クライマックスでは、胸キュンの波が一気に押し寄せる。ミチコが主任に「大人の女になろうと思ったけどダメなんです。だからお願いします。ダメな私に恋してください!」と告白。「もうしてる」という答えからの「おまえ、うるさい」と唇をふさぐキスの流れには、多くの女性視聴者が胸をときめかせたに違いない。

■泥沼不倫の行く末から目が離せない『あなたのことはそれほど』

 キュートな恋を描いた『ダメ恋』から一転、TBS系の同枠で2017年に吉澤さんが手掛けたのは、不倫をテーマにした『あなたのことはそれほど』だ。こちらも、『フィールヤングコミックス』で2010年から連載されていた、いくえみ綾さんの同名漫画を実写化したドラマだ。

 主人公は、夫の涼太と暮らす渡辺美都。彼女はある日、初恋の相手・有島光軌と再会し、W不倫の関係に陥る。やがてその関係は涼太や光軌の妻・麗華にも露見し、全員の想いが絡み合いながら泥沼へと沈んでいく。

 そんなヘビーな不倫模様を描いた本作で主演を務めたのは、波瑠さんだ。本作での演技は、朝ドラ『あさが来た』で見せた爽やかなイメージを覆し、新たな境地を切り開いたといえるだろう。また、涼太役には東出昌大さん、不倫相手の光軌役には鈴木伸之さん、そして麗華役を仲里依紗さんが演じ、それぞれが強烈な印象を残している。

 一方で物語は、原作とドラマで展開や人物の描かれ方にも違いが見られた。たとえば、美都と光軌の学生時代の出来事など、関係性のニュアンスにも変化が加えられている。

 もっとも、原作と比較すると登場人物たちの内面の掘り下げという点ではやや描写が簡潔になっている部分はあった。ただ、それは映像化するうえで、ドラマとしてのテンポを重視したためだろう。

 その分、ドラマのほうは、登場人物たちのそれぞれの会話や空気感を通して人物像や関係性が立ち上がってくる。視聴者はそれを拾いながら見ているうちに、美都や光軌、そして涼太や麗華に対しても気づけばいろいろな感情を持っているのだ。

 不倫モノは実写化の難しいジャンルだが、本作が目を離せないのは人の感情の不確かさや危うさが生々しく描かれているからかもしれない。そうした部分に、吉澤さんならではの持ち味を感じた視聴者は多かったのではないだろうか。

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