■優しい女教師が隠し続けてきた、呪われた過去…矢田亜希子

 普段の姿が優しく穏やかであるからこそ、本性をさらけ出した女性はとにかく恐ろしい……そんな怖さを体現したのが、SECOND SEASONの第4話「ふたりの愛」で矢田亜希子さんが演じた女性教師・沢本愛だろう。

 ある高校の授業中に男子生徒が青酸ソーダを服用し、自殺を図る事件が発生。事件現場にいた生徒たちと、授業を担当していた愛が呼び出され、異例の大規模取り調べが行われることとなった。

 愛は生徒たちのことを心から思う真面目な女教師で、取り調べについても生徒たちの精神的負荷を案じ、必ず自身が同席することを条件にするなど、固い意志を見せていた。

 しかし、そんな彼女に見えたわずかな綻びを、真壁は見逃さなかった。

 一見すれば優しい女教師に見える愛だったが、彼女の母はかつて内縁の夫を殺した殺人だった。被害者となった男子生徒の母親にその事実を非難されたことで、愛は耐え切れなくなり、恋仲にあった男子生徒に青酸ソーダを飲ませて自殺に見せかけるという凶行に及んだのである。

 どれだけ努力しても、決して逃れられない不遇な生い立ちへの絶望……愛は全身を震わせ、内にたぎる黒い怒りをあらわにしながら、真壁にすべてを吐き出すのだった。

 教師として誠実に生きようとしながらも、決して振り払うことのできない過去に苦しめられる彼女ならではの仄暗い怒りが伝わる、まさに迫真の演技であった。

■狡猾さの裏にわずかに残っていた、本物の愛情…高橋メアリージュン

 2021年に放送された4th SEASONの第4話「瀕死の容疑者」では、高橋メアリージュンさんが鬼気迫る熱演を披露し、視聴者を唸らせた。

 高橋さんが演じたのは、食品廃棄物リサイクルシステムの開発で注目を集める企業の女性職員・橘頼子。

 物語冒頭、彼女がシステムを誤作動させたことで専務を含む数名の職員が死亡。自身も緊急搬送され、入院中の彼女に対して取り調べが行われることとなった。

 入院中の容疑者という予想外の状況に四苦八苦しながらも、真壁たちは見事なチームプレーによって真実を解き明かしていく。

 自殺未遂の末に偶発的に職員を巻き込んでしまったかのように見えた頼子だったが、その姿はすべて仮の姿だった。なんと彼女はすべて計算したうえで、自分だけが生き延びられるようにシステムを誤作動させ、恨みを抱いていた専務を殺害。さらには、主治医すらも味方につけていた。

 真実が明らかになると、頼子は自身の計画を嬉々として饒舌に語ったり、殺害した専務への劣等感をあらわにするなど、これまでとは打って変わって感情を爆発させる。その一方で、真壁に“専務のことを本当に愛していた”ことを見抜かれると、それまで抑え込んでいた感情が弾け、激昂する。

 最後はすべての言葉を吐き出して真壁の胸で泣き崩れる姿には、思わず観ているこちら側までも胸を揺さぶられてしまった。

 1人の女性に宿った喜怒哀楽、全方面の演技を短い時間のなかで見事に表現した、とんでもない豹変ぶりであった。

 

 『緊急取調室』は、取り調べを通して容疑者たちの隠された人間性が暴かれていく過程そのものが、大きな見どころだ。

 今回紹介した女優たちは皆、登場人物たちがひた隠しにしてきた過去や心の闇、奥底に宿った怒りなどを、持ち前の演技力によって見事に表現し、視聴者を圧倒した。

 劇場版で描かれる新たなエピソードでは、はたしてどんな攻防が繰り広げられるのだろうか。キントリの最後の勇姿を見に、劇場に足を運んでみてはいかがだろうか。

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