2014年から放送された刑事ドラマ『緊急取調室』は、天海祐希さん演じる女刑事・真壁有希子が、一筋縄ではいかない曲者揃いの容疑者たちを相手に、巧みな取り調べで真実を解き明かしていく物語だ。
12年にわたりシリーズが重ねられ、スペシャルドラマも制作されるほどの人気作品である本作だが、12月26日、ついにシリーズ完結となる劇場版『緊急取調室 THE FINAL』が公開され、大きな話題となっている。
シリーズを通して個性的な容疑者たちが登場する本作だが、なかでも実力派女優たちが演じる女性容疑者は、時に隠された本性をあらわにし、鬼気迫る姿で視聴者を圧倒した。
そこで、凄まじい豹変振りで物語を盛り上げた、女優たちの圧巻の演技を見ていこう。
※本記事には各作品の内容を含みます
■すべては、愛する我が子のため…安達祐実
2014年から放送が開始されたFIRST SEASONから、さまざまな難敵が真壁たちの前に立ちはだかってきた。
なかでも、その豹変ぶりで視聴者の度肝を抜いたのが、第3話「嘘まみれの女」にて登場した安達祐実さんである。
安達さんが演じたのは、夫を殺害したと自供する妻・佐原利香。素直に犯行を認める利香だったが、その供述はどれも的外れなものばかりで、捜査は難航。タイトル通り、無数の嘘を操っていた利香だったが、捜査により真相を暴かれ、最後の取り調べを受けることとなる。
最初こそおしとやかで柔らかな雰囲気を身にまとっていた利香だが、取り調べが進むにつれて徐々にその仮面が剥がれ、ついには押し殺していた本性を爆発させる。
高学歴な夫から見下され、愛する息子にまで矛先を向けた夫の暴力……これまで溜め込んできたすべてを爆発させた利香は、涙を流しながら激昂。毅然と立ち向かう真壁に対し、利香は彼女の胸ぐらを掴み上げ、頬を殴りつける。
これまでかぶっていた仮面を一切脱ぎ捨て、大粒の涙を流しながら罵詈雑言を吐き捨てる姿からは、彼女の抑圧され続けてきた苦しみがこれでもかと伝わってくる。この時の安達さんの鬼気迫る怒りの表情は、恐ろしくも痛々しく、視聴者の胸を震わせた。
序盤の雰囲気からは想像も付かない利香の二面性。不遇な状況に苦しみ、それでも息子だけは守ろうとした母親の悲痛な叫び……ファンの間では語り草になるほど、本作屈指の印象的な回であった。
■人当たりの良い笑顔の裏側には…鶴田真由
2017年から放送されたSECOND SEASONでも、相変わらず一癖も二癖もある難敵がキントリメンバーと火花を散らす。
なかでも、第6話「騙された女」で手強い相手として登場したのが、鶴田真由さん演じるネイリスト・茂手木恭子である。
複数の女性の自殺に関与した疑いで取り調べを受ける恭子だが、穏やかな人柄と巧みに心の内側に寄り添う独特の雰囲気で、キントリの追求をかわしていく。
これまで難敵を落としてきた真壁までも、彼女の術中に……と思われたが、実はこれは真壁のとった作戦だった。わざと懐柔されたように見せかけることで、真壁は恭子の隠していた真実へと斬り込んでいくこととなる。
やがて本性を曝け出した恭子は、これまでの作り笑いを消し去り、平然とした表情で「死ね」と口走ったり、冷たい眼差しで真壁と対峙する。
そして、愛する男に裏切られた真実を突きつけられると、ついには自らのネイルを真壁の手に突き立て、静かかつ凶暴な怒りを剥き出しに。女の情念深さ、犯人としての残忍さをこれでもかというほどに表現した鶴田さんの迫真の演技には、思わずぞっとしてしまう。


