■なんでも盗める『トラキア776』のリフィス

 続いては『ファイアーエムブレム トラキア776』(1999年)のリフィスを振り返りたい。

 シリーズ中でも高い難易度を誇る同作では、基本的にお金を手に入れるにはアイテムを売って工面するしかない。そのため、敵を殺さないように捕らえて武器を奪う必要がある。これは他のシリーズにはない異色のシステムで、当時も賛否両論あった。

 このシステムのせいで難易度が高くなっており、敵を捕らえるために必要な「体格」のパラメータの高いユニットや、体格に関係なく捕らえることが可能な騎馬系ユニットの活躍の場がかなり増えたのが特徴。

 同作に登場するリフィスは、ビジュアル的にはチャラチャラした青年で強そうには見えない。体格の数値がいいわけではなく、騎馬系のユニットでもない。シーフという、いわゆる「盗賊」だ。

 だが、彼のスキルが本作の難易度を激変させるほどのチート性能。彼の持つスキル「ぬすむ」は、自分の体格の数値より軽い武器やアイテムを盗むことができるというもの。

 リフィスの体格の初期値は決して高くはないが、成長を重ねることでかなりの数値まで上げることができる。さらにレアアイテムではあるが、体格のパラメータを上昇させる「ボディリング」というアイテムもある。

 これらを駆使することで、リフィスの体格をマックス近くまで上げることができ、ここまでくれば敵の持っている武器のほとんどを盗めるようになる。強力な武器を手に入れられるだけでなく、武器を奪った敵キャラを完全に無力化することも可能なのだ。

 このスキルがすごいのは、条件を満たせば100%成功する点にある。それはボスキャラであっても例外ではない。体格の上がった終盤のリフィスは、攻撃力はそれほどでもないものの、獅子奮迅の大活躍をすることになるのだ。

 なお、本作独自のシステムとして「疲労システム」がある。行動するごとに疲労がたまっていき、疲労がたまるとそのマップに出撃できなくなる。「捕らえる」と同様に、本作の難易度を上げている要因でもある。

 疲労を回復するには1つのマップを休ませるか、「Sドリンク」というアイテムを使うしかない。だが、Sドリンクはなかなか手に入らない貴重品のため、無駄遣いはできないのだ。

 筆者は、この貴重なSドリンクをほとんどリフィスに投入した。働き方改革に逆行するほどの酷使ぶりだったが、これも世界平和のためである。

 世界を救った一番の功労者は、間違いなく盗賊のリフィスだった。

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