『ウルトラQ』(1966年放送)から始まった昭和『ウルトラ』シリーズには、地球に潜んでいた怪獣や地球の支配を目論む宇宙人など、さまざまな敵が現れてウルトラマンたちと激闘を繰り広げた。
そんな強敵たちの目的もさまざまで、『ウルトラマン』に登場したジャミラは自分を見捨てた地球人への復讐を果たそうとし、『ウルトラセブン』に登場したノンマルトは地球人の海底開発から自分たちの生活圏を守ろうと戦いを挑んできた。
しかし、中には拍子抜けしてしまうような「とんでもない理由」で地球に襲来した怪獣や宇宙人も……。今回はそんな怪獣たちによる、ちょっとおバカな襲来理由を振り返っていこう。
※本記事には各作品の内容を含みます。
■宇宙人が好きな生物? 意外な動物を狙って襲来した「スチール星人」
最初に紹介するのは1973年放送の『ウルトラマンA(エース)』の第40話「パンダを返して!」に登場した宇宙超人「スチール星人」だ。
町にパンダマニアのおじさんが経営しているパンダ堂という薬局があった。店内にはパンダグッズが所狭しと並んでいたが、そこに謎の黒マントの男が出現。妙な言葉をつぶやいたかと思うとマントを翻し、パンダグッズをごっそり盗んでいってしまう。
黒マントの男は北斗星司(ウルトラマンA)と遭遇するものの、時速60キロという人間では考えられない足の速さで逃走し、まんまと姿を消す。
その後、夜の町でパンダが目撃されたほか、黒マントの男が再び現れて玩具店からパンダグッズを強奪。その黒マントの男を追跡した北斗は、ついに倉庫の中で謎の男と対峙する。
黒マントの男は、自分の正体がスチール星人であることを明かし、行動理由を問い詰められると「人間があんなに夢中になっているパンダを、我々の星に持って帰るのだ」と主張。
なんと別の倉庫は男が地球で奪ったパンダグッズであふれかえり、中国の動物園から奪ったという生きたパンダまでいたのである。
スチール星人は巨大化して襲いかかり、ウルトラマンAと戦闘に。身軽さを活かしてウルトラマンAを追い詰めたが、最後は強力な光線技の前に敗れた。意外と強い宇宙人だっただけに、本気で侵略計画を練られていたらウルトラマンAも地球も危なかったかもしれない。
■米どころの名物が食べたいというこだわり派「モチロン」
続いて紹介するのは1973年放送の『ウルトラマンタロウ』第39話「ウルトラ父子餅つき大作戦!」に登場したのが、うす怪獣「モチロン」。
ある日、東光太郎(ウルトラマンタロウ)は施設で暮らす子どもたちのために餅つきを提案。そこに不気味な笑い声とともに怪獣モチロンが飛来し、用意した餅をぺろりと平らげてしまう。
それ以降、モチロンはさまざまな餅つき会場に出現しては餅を強奪。宇宙科学警備隊ZATの攻撃を受けると、モチロンはどこかへ逃げてしまう。
その夜、かつてウルトラマンAとして活躍した月星人の南夕子が、東の前に出現。夕子は「うちのモチロンがバカなことをしてすみません」と謝罪する。
彼女は、地球人が月に抱く思いが届いて怪獣になったのがモチロンだと説明し、そのモチロンが地球の餅が食べたくなって勝手に地球に飛来したことを明かす。
東はモチロンを説得して連れ帰るという夕子とともに向かうが、モチロンは説得に応じるどころか逆に日本の餅をもっと食べたがり、米どころである新潟の餅が食べたいと妙なこだわりまで見せる。
あげく、ウルトラマンタロウに力比べを挑むが、あえなく敗北。そこにウルトラの父が現れ、モチロンを許すようタロウに語りかける。結局モチロンは罰として自分が臼になり、奪った分の餅をついて返すよう命じられるのだった。
夕子のことを「あねさん」と呼び、餅つきで杵で叩かれたときは「いてえなぁ、もう」と愚痴をこぼしていたモチロン。姿は凶暴そうだが、どこか憎めない怪獣だった。


