水曜22時に放送中の三谷幸喜脚本のドラマ『もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう』(フジテレビ系)。キャストの多い作品ゆえに1話は登場人物紹介に重きが置かれていたが、2話では菅田将暉さん演じる脚本家の久部三成が劇場の照明係として働き始め、物語が動き出した。
風営法改正によって閉鎖の危機に瀕した劇場を目の当たりにした久部は、演劇で劇場を復活させようと提案する。演目はシェイクスピアの『真夏の世の夢』。WS劇場を東京一の劇場にすると熱弁する久部の姿に、人々は心を動かされていく。
1995年に三谷さんが手がけた、伝説のギャルソンがレストランを立て直す姿を描いた大ヒットドラマ『王様のレストラン』を思い起こさせるこの展開に、視聴者からは「いきなり面白くなってきた!」という声も。
はたして久部の掲げる演劇構想が吉と出るか凶と出るか、今後の劇場の変化に注目が集まる中、物語が動き出すとともに注目のキャラクターも浮かび上がってきた。
今回は、期待の第4話を前に第3話の見どころと注目のキャストをおさらいしたい。
※本記事は作品の内容を含みます。
■演出家魂を燃やす久部の劇場構想が動き出した第3話
本格的にドラマが動き出した『もしがく』第3話。久部は、演出助手の蓬莱省吾(神木隆之介さん)からの「セリフは短いほうがいい」といった注文にイライラをしながらも台本を書き上げた。
そして翌日、キャスティングが発表される。リカ(二階堂ふみさん)やペトラ鈴木(アンミカさん)、モネ(秋元才加さん)をはじめ、コントオブキングス(大水洋介さん&西村瑞樹さん)、客引きのうる爺(井上順さん)、支配人の浅野大門(野添義弘さん)まで、まさかの全員参加型だ。
さらには、スナック「ペログリース」のウェイター・ケント(松田慎也さん)や用心棒のトニー安藤(市原隼人さん)といった意外な人物まで加わることに。
かくして始まった読み合わせだが、配役に不満な者、勝手にアドリブを入れる者、セリフがつまらないと文句を言う者、声が小さい者とバラバラでまともな稽古にならない。そもそも多くが演劇初心者なのだから仕方のないことだ。
それでもメンバーたちは、それぞれのやり方で懸命にセリフ覚えに励む。久部もまた、オーナーのジェシー(シルビア・グラブさん)に詰め寄られながらも、八分坂中に上演告知をして回り演出プランを練り続けた。
そんな中、久部はかつての劇団「天上天下」でも同じ演目を上演すると知り、新たな波乱の予感も。それでも劇場では練習が続けられ、ついに立ち稽古がスタートするのだった。
テンポ良く進むストーリーと絶妙なコメディ、そして個性的なメンバーの光る瞬間が見どころとなった3話。WS劇場の面々が、これからどんな舞台を作り上げていくのか楽しみである。
■寡黙な用心棒・トニー覚醒!市原隼人さんの演技が光る
非常に多いキャラクターが登場する本作だが、3話の中でひと際輝きを放ったのが、用心棒のトニー安藤役の市原隼人さんだ。トニーはいつも睨みをきかせながら現場を見守る寡黙な男で、これまでほとんど目立つこともなかった。
そんなトニーが、『真夏の夜の夢』でハーミアの恋人・ライサンダーという大役に抜擢される。演劇未経験の彼は拒否するが意見は通らず、不本意ながらも舞台に立つことになってしまう。
実際、その演技はあまりにも拙かった。眉間にしわを寄せ、蚊の鳴くような声でたどたどしくセリフをなぞるだけで人前に出せるレベルではない。とはいえ、本人は真剣そのもの。セリフの追い方は誰よりも真面目ゆえ、久部に「声が小さい」と注意され、「や、やらなきゃだめか……?」と辛そうにする姿が逆に愛らしく見えてしまう。
そんな中、久部はトニーを連れて「天上天下」にチラシを配りに行く。かつての仲間たちは意気込む久部を嘲笑い、さらに黒崎(小澤雄太さん)はトニーを挑発してライサンダー役の演技対決を迫った。
久部は稽古中だからと帰ろうとするが、トニーは悔しそうな久部を見て何かを考え、ライサンダー役の前に戻っていく。そして、喧嘩でも始めそうな怖い表情で近づいたかと思うと、スッと眉を下げて優しい表情に変え、色気に満ちた声で「心は一つ……ベッドも一つ……胸は二つでも愛の誠は一つ」と美しいセリフを口にした。
感情のこもったその演技に団員たちは圧倒され、久部は嬉しそうな笑みを浮かべる。シャイで寡黙で人情味あふれるトニーが覚醒した瞬間だった。
用心棒トニーから愛情に満ちたライサンダーに切り替わるこの瞬間は、見事のひとこと。市原さんの表現力の高さが発揮された名場面である。


