
数万円から数十万円の値段がつくこともある「レトロゲーム」の世界。そんなソフトがズラリと揃う『ハードオフTOKYOラボ吉祥寺店』の店長にして、自身も大のゲームコレクターである大竹剛氏が、毎回1本のソフトを語るこの連載。今回、ショーケースに並ぶソフトの中から取り上げるのは——?
■大竹店長がローカライズした海外版“くにおくんシリーズ”

ハードオフ大竹店長の「レトロゲームちょっといい話」第18回
『ハードオフTOKYOラボ吉祥寺店』の店長、大竹剛です。前回は、私がゲームメーカー「テクノスジャパン」に入社して、初めて開発に関わった“くにおくん”のファミコンソフト『いけいけ!熱血ホッケー部「すべってころんで大乱闘」』(1992年)のお話をしました。実は、これには「幻の海外版」が存在しまして……。
開発が終わってすぐ、ローカライズの作業に入ったんですね。セリフを英語にするのはもちろん、校内新聞のグラフィックを英字新聞ぽくしたり、アイスリンクにデザインされた漢字を英字にしたり……。そして『CRASH ‘N’ THE BOYS ICE CHALLENGE』というタイトルまで決まっていたのに、結果、発売されなかったんです。すごく残念でした。
ちなみに、くにおくんがハードル走や幅跳びなどに挑戦する『びっくり熱血新記録!はるかなる金メダル』(1992年)は、『CRASH ‘N’ THE BOYS STREET CHALLENGE』としてNESで発売されています。シリーズの構想があったんでしょうね。
ということで、今回は“くにおくんシリーズ”のNES(ニンテンドー・エンターテインメント・システム)版についてお話しようと、私のコレクションから非売品の海外ソフトを持参しました。ちなみに、ハードオフではNESの商品も取り扱っています。
■任天堂のサッカーゲーム『NINTENDO WORLD CUP』の中身
持参した海外ソフトのなかでも、特にご紹介したいのが、任天堂から発売された『NINTENDO WORLD CUP』です。パッケージには写実的なイラストが使われていて、本格的なサッカーゲームの雰囲気を漂わせています。
でもこのソフト、中身は『熱血高校ドッジボール部 サッカー編』(1990年)なんです(笑)。デフォルメされたくにおくんたちが出てきますし、必殺シュートも使えます。もともと“ケンカサッカー”ですから、ファウルもありません。ワールドカップということで、13か国の代表チームが対戦するように改変されているようですけどね。
ファミコンにサッカーのゲームってほかにもあったと思うんですけど、任天堂さんはなぜこれを“サッカーゲーム代表”みたいな位置づけに選んだんでしょうか(笑)。
ちなみに、1991年に発売されたゲームボーイ版『熱血高校サッカー部 ワールドカップ編』も、海外では『NINTENDO WORLD CUP』の名でリリースされ、双方とも“ワールドカップ”ということで、NES版と同じ13か国が登場しました。
ゲームボーイ版は通信プレイができるんですよね。これはテクノスジャパンを辞めてからの話ですが、国内版と海外版で一緒に遊べるのかなと興味を持って、eBayでソフトを買って試してみたんですよ。通信はできるのですが、同期が取れないのか、ボールがどこへいくのかわからないような感じで、遊べるレベルではなかったです(笑)。