鬼滅の刃「猗窩座」だけじゃない!声優・石田彰が魅せた「伝説の神演技」 「絶対、女性の声だと思った…」の画像
『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』第3弾キービジュアル (c)吾峠呼世晴/集英社 (c)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable

 吾峠呼世晴さんの漫画を原作としたアニメ映画『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』で上弦の参・猗窩座を演じる石田彰さん。これまで映画、アニメ、ゲームと多くの作品でさまざまなキャラの声を務めてきたが、その甘く色気のある声は唯一無二のものだ。

 同作は公開31日間で観客動員1827万2941人、興行収入257億8265万6600円を記録するなど大ヒット上映中。猗窩座が登場した2020年の前作『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』は国内歴代1位となる興収404.3億円を突破した作品であり、同作のメインキャラだった炎柱・煉獄杏寿郎が「400億の男」と注目されていた。今回その記録が塗り替えられることに期待するファンも多いようで、公開すぐからネット上では「猗窩座を500億の男に」といった声も上がっていた。

 映画で再び炭治郎らの前に現れた猗窩座。その不気味なまでのカリスマ性を表現する石田さんは、キャラによって巧みに声を使い分け、これまでも多数の作品で視聴者を魅了してきた。そこで今回は、石田さんが魅せた特徴的なキャラを振り返ってみよう。

■当時は女性声優が演じていると思われていたフィッシュ・アイ

 『新世紀エヴァンゲリオン』の渚カヲルなど、石田さんは中性的でどこか憂いのある役柄が多いが、さらに性別の壁を軽やかに超えていくキャラもいた。『美少女戦士セーラームーンSuperS』に登場するフィッシュ・アイ役は、視聴者に大きな衝撃をもたらした石田さんが演じた名キャラのひとりだろう。

 青い長髪と美しい顔立ちのフィッシュ・アイは、デッドムーンに仕えるアマゾントリオの一人。魚の化身で性別は男性だが、いわゆる“男の娘”であり、作中では小悪魔的な立ち振る舞いで多くの男性を惑わせ、同時に視聴者の女子たちをもメロメロにしてしまうという、ある意味、完璧な女子だった。

 そんなフィッシュ・アイの魅力を極限まで引き上げたのが、声優を務めた石田さんである。通常、男性が女性の声を出すと違いに気づくものだが、石田さんは驚くほどに違和感がない。

 当時は男性声優が女性役を演じることも珍しく、その自然さゆえに多くの視聴者が女性声優が声を当てていると思い込んでいた。筆者もその一人で、真実を知ったときは衝撃を受けたものである。

 作中でフィッシュ・アイは地場衛に恋をするが、衛は全く振り向かず切ない想いを抱えることになる。石田さんはフィッシュ・アイの想いを繊細かつ情感豊かに表現しており、そこには確かに恋する乙女の姿があった。

 石田さんは、ラジオ『スーパーダンガンラジオ 緒方恵美の絶望学園放送部』などで「もう女性の声はできない」と発言していたが、いつかまた女性キャラを演じてほしいものである。

■青年から老人まで!圧倒的な技術力を見せつけた有楽亭八雲

 性別だけでなく、年齢の垣根を超えたのが、2016年放送のアニメ『昭和元禄落語心中』での八代目有楽亭八雲役だ。

 八雲は、主人公・与太郎が弟子入りした落語界の重鎮で、「昭和最後の名人」と称される人物。作中では、菊比古と呼ばれた少年期から老年期に至るまでの八雲の生涯が描かれ、石田さんはその青年期から老年期を声色を使い分けながら演じている。

 青年期の菊比古は線の細い端正な顔立ちをしており、どこかはかなげで危うい色気を放つキャラ。細く鋭い声を出し、その声からは芸に対する真面目な向き合い方、張りつめた緊張感と内向的な性格が滲み出ていた。

 八代目を襲名した壮年期の八雲は、経験を積む中で自信と風格を身につけていく。色気を増し、静かな情熱を感じさせる声で、さらに老年期では、声がさらに渋く落ち着きのあるものに変化。温かくもこれまでの人生を思い起こさせる哀愁、そして孤独感を漂わせるものとなっていった。

 石田さんはこの絶妙な違いを声質だけでなく、言葉の置き方を変えることで見事に表現し、有楽亭八雲という一人の人間の生涯を演じ切ったのである。

 そして、もう一つの見どころが高座シーンだ。中でも、10話で披露した「死神」は圧巻。公式ガイドブックで石田さんは、配役を決める際に行われた落語オーディションで、立川志らくさんによる「死神」を参考にしたオリジナル台本を持ち込んだと明かしているが、この八雲の落語を志らくさん本人も絶賛。Xでは幾度も石田さんの話題を取り上げており、「石田さんの落語の演じ方の捉え方が天才的」「志らくの死神をベースにした八雲の死神から私は新たなインスピレーションを感じた」と投稿している。

 本人は先行上映会で「これはとんでもない仕事にぶち当たってしまったと思った」と語っていたが、八雲という高難易度の役柄をこなせたのは石田さんの技術力と感性があったからに他ならない。

  1. 1
  2. 2
  3. 3