■抱腹絶倒のギャグパートも全力でこなす!桂小太郎
フィッシュ・アイや有楽亭八雲といった個性的で難しい役柄がハマる石田さんだが、その一方でコミカルな役柄との親和性も高い。中でも強烈なインパクトなのが『銀魂』に登場する坂田銀時の旧友・桂小太郎だ。
桂は「攘夷党」の党首という顔を持ちながら性格はなかなかにぶっ飛んでおり、作中でもトップクラスの天然ボケキャラ。本人はいたって真面目なようだが、繰り出されるギャグの数々は笑わずにはいられないハイレベルなものばかりだ。
だが心の中には強い信念と仲間への想いがたぎっており、シリアス回ではしばしば志士としてのカッコイイ一面を見せる。このギャップこそが、桂小太郎という人物の魅力なのである。
石田さんはこの個性をうまく捉え、声で二面性を演じ分けていた。シリアスな場面は低めで力強い声で、またコミカルな場面は軽やかで誇張気味に抑揚がつけられ、時に唐突にテンションを爆発させる。「ヅラじゃない、桂だ!」という定番のギャグセリフにすら、うっすら真面目さが混ざっており、だからこそ面白い。
さらに桂のコミカルさは、普段はめったに笑わないと言われる石田さん自身にも刺激を与えた。『柳の下にどじょうは沢山いる』のエピソードは、銀時らがインフルエンザに侵されるドタバタ回だが、通称「ウイルス・ミス回」とも呼ばれており、オチとして桂の風貌が俳優のウィル・スミスのようになる場面がある。このアフレコ時、銀時役の杉田智和さんや新八役の阪口大助さんらの明かした話によると、桂のこのくだりで石田さんがツボに入ってしまい、セリフが読めなくなる事件が起こったのだとか。
石田さんにとってここまで突飛なコミカルキャラはこれまでいなかったこともあり、こんな小ネタを含めて桂小太郎は石田さんの声優人生において刺激的な役柄なのだ。
プライベートでは、声優仲間からのお昼ご飯の誘いを「これからお昼ご飯にいくから」という理由で断るなど、マイペースかつ天然なエピソードが次々と明かされている石田さん。アニメの中で見せる高い技術力とのギャップもまた視聴者から愛されるポイントだ。これからもたくさんのキャラに命を吹き込み、我々を楽しませてくれることだろう。