■理想を追い求めた男の「悲しすぎる末路」
平民で組織された「骸旅団」の団長ウィーグラフが求めるのは、貴族も平民も平等に暮らせる社会。時には金欲しさで勝手な行動をした副団長を自ら粛正するなど、高潔な想いを持って貴族に立ち向かった人物だ。
ウィーグラフの妹のミルウーダは、骸旅団がティータを誘拐したときの戦いでラムザたちに敗れて死亡。そのことをウィーグラフは恨んでいた。そしてその骸旅団も壊滅し、ついに残されたのはウィーグラフ1人となってしまう。
その後、ラムザはウィーグラフと意外なかたちで再会を果たす。強大な悪魔の力を持つ聖石を悪用しようとする教会が組織する神殿騎士団にウィーグラフの姿があったのである。
弱者を利用する教会に味方するウィーグラフにラムザは失望する。そのときウィーグラフは「どれほど素晴らしい理想を掲げていても実現できなければただの夢に過ぎない。実現するためには力が必要だと悟った」と、これまでの高潔な思想の持ち主とは思えない現実的な考えを口にする。
その後ラムザとの戦いに敗れ、致命傷を負ったウィーグラフ。何も果たせずに死んでいく彼の無念に、悪魔の聖石が反応する。
「我と契約を結べ……」という悪魔の声に、ウィーグラフは魂を売る。かつて高潔な理想を掲げていた男は「魔人ベリアス」と化し、人間であることを捨てた。
貴族も平民もない理想の世界を実現するため、ひたすらまっすぐ信念を貫いてきた男の末路はあまりにも悲しく、怪物に成り果てたおぞましい姿がとにかく恐ろしかった。
『ファイナルファンタジータクティクス』のストーリーは、どちらの陣営が絶対の正義というわけではなく、それゆえに胸の痛くなるような場面が記憶に残る。展開ごとに、いろいろ考えさせられるシナリオに引き込まれた人も多いことだろう。
2025年9月30日に発売となる『ファイナルファンタジータクティクス イヴァリースクロニクルズ』では、フルボイスで楽しめる「エンハンスド版」と、原作そのままに文字で読める「クラシック版」が同時収録され、選べるという。
もちろん今回紹介していないエピソードもたくさんあるので、それらの物語が最新の映像でどのように表現されるのか楽しみでならない。