■ボタン電池が不要! 夢のようだった『LCDソーラーパワー』シリーズ

もう一方の『LCDソーラーパワー』シリーズというのは画期的でした! というのも、電子ゲームは通常、ボタン電池を使うんですが、これがすぐ消耗しちゃうんですよ。だけど、今と違って100円ショップなんかないですから、個人商店の電気屋さんに買いに行くと、1個1000円とかするわけです。そのぶん品質はよかったんでしょうけど、小学生や中学生が気軽に取り替えられる値段じゃありません。
ところが、名前から想像できるように、『LCDソーラーパワー』にはソーラーシステムが採用されていて、ボタン電池の取り替えが不要なんです。子どもにとっては夢みたいな話でした。
このシリーズは『ゲーム&ウオッチ』の“マルチスクリーン”のように、上下に開く形状なのですが、上にあるのはソーラーパネル。液晶画面はひとつしかありません。ですが、1つの画面で2つのパターンが展開されるんです。
たとえば、大好きだった『大脱走』の場合、第1パターンは、牢屋の中で看守の目を盗み、鉄格子をノコギリで切る面。成功して牢屋を出ると第2パターンに移り、牢屋の外で警察犬から逃げて、クルマで脱走する面になります。
これはクリエイター目線の話かもしれませんが、1枚の液晶画面に、全く違うふたつの面をデザインしているところに、技術やセンスを感じるんですよね。よく見ると、第1パターンの牢屋の壁を、第2パターンでは外壁としてそのまま使っていたりして、うまいこと表現しているんですよ。
今、当店にある『悪霊の館』は、これをさらに発展させたもので、1つの画面にパネルを2枚重ねることで、それぞれ異なるパターンを表現しているんです。1枚目では館の外の墓場、2枚目では館の中でのゲームが展開されます。
思えば、『大脱走』というのも刑務所からの脱出をテーマとしているワケで、やっぱりタブーな題材ですよね。当時はなぜ、バンダイの電子ゲームにひかれるのかよくわかっていませんでしたが、こうして振り返ったことでハッキリしてきました。やっちゃいけないことをやりたくなるんですよね、子どもって(笑)。
※ソフトの値段や状態などは取材時のものです。
【プロフィール】
大竹剛(おおたけ・つよし)
「レトロゲーム」に造詣が深い“元ドット絵職人”。ゲームメーカー「テクノスジャパン」で、主に『くにおくん』シリーズにドッターとして参加。現在は「ハードオフTOKYOラボ吉祥寺店」で店長を務める。本人もレトロなゲームのコレクター。