■ずっと呼ばれたら嫌すぎる『はじめの一歩』ゲロ道
続いては、一つの失敗がニックネームになったパターンを見ていく。森川ジョージさんの『はじめの一歩』には、「ゲロ道」という思わずギョッとしてしまうニックネームの人物がいる。
彼の本名は山田直道。気弱で無口で、一見するとボクシングとは無縁な男だ。幕之内一歩に憧れた直道は鴨川ジムの門を叩くが、待ち受けていたのは地獄のロードワークテストだった。
あまりの過酷さに20人いた参加者がほぼリタイアする中、直道は吐きながらも何とかゴールし、唯一の入門者となる。だが、ゴール後に一歩から褒められた瞬間、彼のシャツを掴んで盛大に嘔吐。それを見ていた鷹村守によって、「ゲロ道」という不名誉なニックネームをつけられてしまった。
その後、直道はジュニアウェルター級でプロになるも青森に転校し、移籍した八戸拳闘会からハンマー・ナオとしてデビュー。ガラッと変わった外見も衝撃的だが、最弱ながら一歩との試合のために努力を続け、最短距離で一歩とのタイトルマッチに挑むシーンは必見だ。
他作品では、春野友矢さんの『ディーふらぐ!』に登場する神泉も、すぐに吐くということで「ゲロ子」というニックネームがついている。全校集会で吐くなど女子には可哀想な場面も多く、なかなかに不憫なキャラだ。
■可愛いのにクセが強すぎてニックネームも霞む『僕は友達が少ない』の肉
最後は比較的最近の作品から、平坂読さんのライトノベル『僕は友達が少ない』に登場する柏崎星奈を見ていこう。星奈は、容姿端麗・学園理事長の娘・文武両道のパーフェクトガール。しかし、女王様気質かつナルシストという性格が災いして友達がいない。
そんな星奈は友達作りのために「隣人部」に入部する。だが、部長の三日月夜空もまたクセが強く、初対面からぶつかってしまう。夜空は星奈のスタイルの良さにも嫉妬しており、当初は彼女を「下品な乳牛」や「牛女」などと揶揄していた。
後日、流行りの「モンスター狩人」なるゲームをやることになった部員たち。ゲーム機を持ち寄りいざゲームを起動すると、星奈はすでにレベルが上がっていた。
ドヤ顔の星奈に夜空は「プレイ時間を見せろ、“肉”」と言い、コッソリやり込んでいたことが判明すると「“生焼け肉”のくせに」と抜け駆けに激怒。それ以来、星奈のニックネームは「肉」になった。
ひどい呼び名とはいえ、星奈にとって夜空は初めての友達。喧嘩ばかりでも、「肉」という女子が言われたら嫌であろうニックネームを喜んで受け入れているようだ。ちなみに、星奈はその後、個性派の道を突き進んでいくのだった。
漫画やアニメでは、自分が呼ばれたらちょっとイヤなニックネームのキャラも多い。とはいえ、本人が気に入っているなら、話は別だ。近年では、ニックネームで呼ばないように指導している小学校も多いそうだが、本当に仲の良い間柄であれば、ニックネームは友情の証となるだろう。