
漫画やアニメに登場する強く有能なキャラクターたちは、物語を牽引するために不可欠な存在だ。高い戦闘能力、明晰な頭脳など、ほかの追随を許さない能力によって場を盛り上げ、仲間たちを導き希望として輝く。
しかしなかには、それまで目覚ましい活躍を見せつけながら、あまりにも早すぎる散り様で読者や視聴者を驚かせたキャラクターも登場する。これからどんな活躍を見せてくれるのだろうと期待していたキャラの突然の死は見る者に強いショックや喪失感を与えるが、ただ、これを機に物語が大きく動くケースもある。
今回は、まさかの死により、物語から早期退場をしてしまった有能キャラたちについて見ていこう。
※本記事には各作品の内容を含みます
■作者すらも惜しんだあまりにも早すぎる死…『銀河英雄伝説』ジークフリード・キルヒアイス
人々が宇宙へと進出した未来の銀河系を舞台に、2つの巨大な国家の争いと、そこに現れた2人の英雄の活躍を描いた小説家・田中芳樹氏のSF小説『銀河英雄伝説』。その人気の高さからアニメや漫画などメディア展開が続く大長編作品だ。
さまざまな立場、陣営の登場人物たちが織りなす群像劇も本作の見どころの一つ。そのなかでも比類なき有能さを見せつけながら、あまりにも早い退場によってファンを驚かせたのが、銀河帝国側の主要人物の一人であるジークフリード・キルヒアイスだろう。
帝国側の主人公・ラインハルト・フォン・ローエングラムの親友兼側近として活躍するキルヒアイスは、深紅の髪に整った顔立ち、高身長の容姿端麗な人物だ。
温厚で心優しい性格だが、一方で軍人としての能力は非常に高い。白兵戦、射撃能力など個の力もさることながら、軍団を的確に操作する指揮能力にも長けている。戦場に立つには珍しい好人物な点も、彼の魅力の一つだろう。
人当たりの良さはラインハルトの側近としても活かされ、緩衝材のような存在として彼を支え続けた。
その有能ぶりから多くのファンを魅了したキルヒアイスだが、凶弾に狙われたラインハルトを身を挺して救ったことがきっかけで致命傷を負い、亡くなってしまう。
原作小説は全10巻あるのだが、彼の死が描かれたのは2巻。まだまだ物語の序盤のことであった。
その早すぎる死を作中に登場するキャラたちもことあるごとに嘆いていたが、実は作者である田中氏もあとがきのなかで、“もう少し遅くするべきだった”とコメントを残している。
もし彼が生きていれば、その後の戦争の展開、結末も大きく変わっていたのではないだろうか。
■最期までまっすぐあり続けた頼れる炎柱…『鬼滅の刃』煉獄杏寿郎
2016年から『週刊少年ジャンプ』(集英社)にて連載された吾峠呼世晴氏の『鬼滅の刃』は、社会現象をも巻き起こした人気作品だ。今年7月18日から最終章となる『劇場版「鬼滅の刃」無限城編』3部作が公開されるとあって、ファンも盛り上がりを見せている。
本作は主人公・竈門炭治郎が鬼と化した妹を救うため、精鋭集団「鬼殺隊」の一員として鬼と激戦を繰り広げる物語である。
この鬼殺隊には「柱」と呼ばれる最高位の9人の剣士たちがいるのだが、なかでも圧倒的な実力と独特の人柄で高い人気を誇るのが、“炎柱”・煉獄杏寿郎だ。
先端が赤みがかった荒々しい金髪、常に見開かれた強い眼光が特徴的な杏寿郎。非常に正義感が強く、いかなるときも柱としての責務をまっとうしようとするまっすぐな心を持っている。
そんな人気キャラの杏寿郎が思わぬ死を遂げるのが「無限列車編」でのこと。
炭治郎らと共闘する杏寿郎は鬼に支配された列車のなか、たった一人で列車5両を駆け抜け、乗客たちを守り抜く離れ業を見せつける。だが、列車脱出後、襲来した"上弦の参"・猗窩座との死闘で負った傷が致命傷となり、命を落としてしまうのだ。
これまでの鬼とは異次元の実力を持つ猗窩座に対し、ひるむことなく真っ向から渡り合った姿は忘れられない。炎柱としての実力を発揮したのも束の間、日が昇るなか、彼は静かに息を引き取る。そのあまりにも儚い散り様に、共闘した炭治郎らも涙を流し悲しみに暮れた。
作中で描かれた杏寿郎の活躍期間は短かったが、柱としての高い戦闘能力、困難に真っ向から立ち向かう精神力、炭治郎らを前に見せた面倒見の良さなど、その人柄が多くのファンの心を惹きつけ続けている。