
田中芳樹氏によるスペース・オペラ『銀河英雄伝説』。1982年にトクマ・ノベルズから小説第1巻が刊行され、1988年から劇場用長編やOVAとしてアニメシリーズが展開。2018年からは『銀河英雄伝説 Die Neue These』のタイトルで再びアニメ化され、幅広い世代から人気を集めてきた。
銀河帝国軍で最年少の元帥となり、後に銀河帝国の皇帝にまでなる青年ラインハルト・フォン・ローエングラム、そして「魔術師」とまで称されるような戦術を駆使して戦果を挙げ、自由惑星同盟軍最年少の元帥にまで上り詰めた軍人ヤン・ウェンリーの2人の英雄を中心に描いた壮大な物語だ。
遠未来の銀河系を舞台にした『銀河英雄伝説』は、戦争や国の存亡を描いた作品であり、登場する戦闘は数万隻にも及ぶ艦隊同士の艦隊戦がメインとなることが多く、戦術や戦略に長けたキャラクターが「強い」印象を与える。
だが、それ以外の点で怪物じみた能力を持ち、異彩を放つキャラたちもおり、負けじと人気を集めてきた。
■巨体を武器に並外れた力を発揮したオフレッサー
たとえば、2メートルの巨漢で暴れまくる銀河帝国軍将校・オフレッサーもその一人。
物語の主人公の一人であるラインハルトは、下級貴族の出身でありながら常に戦いの先頭に立って戦果を挙げてきた。だが、長年銀河帝国を支配してきた門閥貴族たちは前線にも立つことなく実権を握り続けており、ラインハルトはそんな腐敗しきった帝国を打倒することを目的としていた。
ラインハルト軍の提督たちは、門閥貴族たちを「貴族のばか息子ども」などと呼び、戦術も知らないのに大きな顔をする奴らであると揶揄していたのだが、オフレッサーに対する評価だけは少し違った。
オフレッサーは門閥貴族の出身であるが、白兵戦を得意とする巨漢。巨大な斧を振り回す並外れた怪力で多くの敵をなぎ倒して戦果を挙げてきた人物だった。
その戦果もあってか、上級大将という高い地位を得ている。
艦隊戦における戦術では右に出る者はいないミッターマイヤーやロイエンタールといったラインハルト旗下の提督たちであっても、オフレッサーと1対1で戦うとしたらどうするかについて「すっ飛んで逃げる」と語っている。それほど肉弾戦での評価は圧倒的だったのだ。
その化け物ぶりはOVA第20話「流血の宇宙」で遺憾なく発揮されており、巨体に似合わぬ俊敏さで次から次へと敵をなぎ倒す様子が描かれている。もはや彼だけ別の作品から来たかのような圧倒的な存在感があった。だが、ミッターマイヤーとロイエンタールの挑発に乗り、単純な罠にはまってしまう。まさに「脳筋」を絵に描いたような形で捕虜になってしまった。
肉弾戦に対しては無類の強さを発揮するという、『銀英伝』の中では異質のキャラクターだったが、それだけに印象に残る人物だった。